2006年2月1日水曜日

東京の休日

〔えいが〕

1958年、東宝。山本嘉次郎監督。山口淑子、上原謙、久慈あさみ主演。

山口淑子の映画生活20年記念映画にして、引退記念映画
東宝オールスターキャストによる、歌と踊り満載の作品です。
もちろん、山口淑子も『夜来香』他数曲を歌っています。

冒頭、

協賛
比国パラトーン撮影所
遠東影業有限公司

と出るのは、フィリピン人キャスト(ビンボー・ダナオ、他)と台湾人キャスト(陳惠珠)の関係でしょう。
ちなみに、遠東は当時東宝映画の台湾における配給権を握っていました。

山口淑子演じるメリー川口の設定(子供の頃両親と共にアメリカに渡り、長じてデザイナーとして成功)は、彼女自身の境遇を少しく投影したものなのでしょうが、元夫(イサムノグチ)のイメージもどこかだぶります。

彼女が同行するアメリカの日系人旅行団体「1世観光団」は、勝ち組と負け組に分かれて大喧嘩しているという、アメリカというよりはブラジルの日系人みたいな団体さんです。
ま、笑えるといえば笑えるものの、戦時中、彼らがどれほどの辛酸を舐めたか、それはまだ日本では知られていなかったのか、それとも知っていたけれど敢えて無視したのか、いささか複雑な思いもいたしました。

途中、中華料理店「李香蘭」の主人として森繁久彌が登場、「李香蘭のファンなのか?」と尋ねる司葉子(客。銀座の美人喫茶〔たぶん〕のウェイトレスさん)に対して、おかしな日本語(フランキー堺系。というか、こっちの方が早いのか)で、

昔、満州で同じ名前の大きなレストランを経営していたが、あの子は小さい頃、うちの店によく食事に来ていた。 だからデビューするとき、自分の店の名前を芸名にしてあげた。

としようもない駄法螺を吐き、

満州ではレストランだけでなく、放送局も経営していたんだ。

と自分のことまでネタにしていました。

そういや、ここの件で、宝田さん(客。銀座の花屋で働いていて、司葉子と恋人同士の設定)、

一杯、白乾兒!

とか、中国語の台詞をちょこっとだけしゃべっていました。
『香港の夜』のルーツね。

ところで、先ほど台湾人キャストと書きましたが、映画が始まって間もなく、羽田へ向かう飛行機内で山口淑子の席に座っていた旗袍姿の女性が陳惠珠です。
この当時、東宝芸能学校で学んでいた彼女は、卒業後台湾へ帰国、中央電影の専属女優となっていくつかの作品に出演した後再び来日、母校で中国舞踊を教えながら舞台やテレビに出演、特に1961年9月19日に放映された日立劇場『私は嘘をついた』(TBS)は、彼女の半生を描いたドラマで、彼女自身が主演しているそうです。
その後、日本人と結婚して日本に帰化、現在ではこちらの学院長としてご活躍中です(こんなドラマの原作も)。
1970年の『社長学ABC 正・続』では、小沢昭一演じる旺滄海(おー!そーかい)の夫人役で顔を見せていました(2人の姪を演じていたのが、後に邵氏で活躍する恬妮) 。

以前CSでも放映されたことのある本作ですが、この日の上映用プリントは色褪せ褪せの非常に状態の悪いものでした。
ここらでひとつ、新しく焼き直していただきたいものです。

(於:ラピュタ阿佐ヶ谷)

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