彼女の出世作『翠翠』で使われた「熱烘烘的太陽」です。
1955年、日本・香港(松竹・國際)。野村芳太郎監督。佐田啓二、有馬稲子、岸恵子、林黛、厳俊主演。
戦後初の香港ロケ映画である『亡命記』と同時撮影された日港合作映画。
『亡命記』に登場する香港が、劇中ではあくまでも南京や上海だったのに対して、こちらでは香港が香港として登場します。
前にも書きましたが、本作にやや先行して公開された『楊貴妃』(大映・邵氏)が、合作とは言いながら香港からは一部スタッフが参加したのみだったのに対し、この映画は主要キャストに香港のトップスターが起用されている点、後の東宝と電懋(國際の後身)の合作映画の先駆とも言える作品です。
また、林黛演じる日中ハーフの京劇女優が日本で父親(日本人)探しをし、主人公である新聞記者はその親探しに協力する、というモチーフも、後の『香港の夜』に受け継がれています。
劇中のクライマックスは、林黛が幼い頃父から教わったという『花嫁人形』をテレビで歌うという件。
香港女優に歌わせるという趣向も、この後の東宝&電懋作品に継承されます。
ロケ地に関しても、スターフェリーやピークトラム、タイガーバームガーデン等、この後の香港ロケ映画で出てくる目ぼしい名所はたいてい押えられていました(こちらもご覧下さい)。
ピークトラムに乗ってタイガーバームガーデンに行くという、ありえねー!設定もありましたけど。
夜の香港の街頭風景に今はなき雙喜大茶樓がちらりと映るのは、予想外のお値打ち。
映画の内容としては、「お互いいろいろあったけど、これからは仲良くしようね」という日華親善映画で、どこか日本の罪滅ぼし的な匂いもなきにしもあらずな印象でありました。
なお、『亡命記』では、
撮影協助 国際影片発行公司
と表記されていましたが、本作では、
協賛
カセイ・オーガニゼーション
(シンガポール‐香港)
国際影片発行公司
香港永華影業公司
となっていました。
あと、そういえば、林黛の役名がやっぱり麗花だったわねえ。
日本人が連想する中国の女性の名前って、麗華(花)か香蘭しかないんだろうか。
なぞだ。
(於:三百人劇場)
付記:ありえねー!といえば、文武廟からあっという間に香港仔に到達する(自分の足で走ってだよ)、バイオニックジェミー並みの脚力を持つ男・竹脇無我というのもありました(『神火101 殺しの用心棒』)。
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