2009年1月28日水曜日

アンコール・ワット物語 美しき哀愁

1958年、連合映画・東宝。渡辺邦男監督。池辺良、安西郷子、山口淑子、羅維主演。 去年、CS放映時に録画したきりだったのを、ようやく観ますた。 カンボジアで大規模(だと思う)ロケーションを行った映画。 この後、テレビドラマでは『怪傑ハリマオ』(1960年)、映画では『あの橋の畔で 第3部』(1963年)等でカンボジアロケが行われましたが、本作は1955年の日本カンボジア友好条約調印後、初のカンボジアロケ映画だったようです。
・・・・が! 国王:羅維 侍従長:黒塗りした東野英治郎 という、 キャスティング に、不安を感じていたところ、案の定、映画の中身も政情不安・・・・というか、ひたすら冗長で退屈ですた。 1時間40分ほどの上映時間なのに、その倍ぐらいの長さに感じられます。 メインのストーリーの合間合間に入る田中春男の関西弁ギャグも、はっきりいって興ざめで、こんなもんきれいさっぱりカットしちゃった方がよほどすっきりすると思いますた。 カンボジア人の役もみんな日本人が演じており(羅維除く)、台詞もすべて日本語のため(羅維は吹替)、当然のことながら誰が日本人で誰がカンボジア人なのか全く区別がつきません。 特に、カンボジアの悪口をさんざん言い募って田崎潤(人力車夫!)と大喧嘩になる坊屋三郎なんか、日本人だと思って観ていたら後になって反王室のビラをまいていた首謀者とわかり、ようやく日本人ではないと気づいた次第。 しかも、カンボジア人(役の日本人)が日本語の標準語で関西弁丸出しの田中春男に向かって、「わが国では只今標準語推進運動をおこなっております」とか言うもんだから、ますますややこしくなるし、プノンペンのレストランでは、雪村いづみがあやしいカンボジア娘の歌を歌っているし(『アキラのブンガワンソロ』も真っ青)、ある意味、これは謎の日タイ合作映画『山田長政王者の剣』を上回る怪作かも知れません。
無国籍歌手・いづみ嬢。
それにしてもさあ、いくら子供の頃のことだからって、安西郷子が池辺良の顔を全然覚えていない(自分が探している少尉=池辺良だということに、初めは全く気付かない)って、どうなんでしょ? あれがもしも遠藤辰雄(太津朗。あ、あくまで一例として挙げただけです)だったら、わかった瞬間に黙って逃げてたような気がするな(おいおい!)。 それに、1918年生まれの羅維と1934年生まれの安西郷子が兄妹って、なんだか『花街の母』が聴こえてくるようだったよ。 ま、とりあえず、独立間もない頃のプノンペンの街と、クメールルージュによって破壊される前のアンコールワットの映像等々、政情不安に陥る前のカンボジアの姿が拝めるのが何より貴重な映画ってことで。 もしかして、あのキャスティングが政情不安を招いた・・・・なんてことはないよね。 付記: 1、この映画、香港から羅維や江楓が参加している点や、当時、山口淑子が香港で映画を撮っていた点からみて、邵氏が何らかの形で協力していると考えられます(ノンクレジットですけれど)。 2、以前、旧ブログにおいて『國王與她』というタイ映画が実は本作のことを指すのではないか?と推測したことがありましたが、どうやらこれは誤りだったようです。本作に東方明珠は出ていませんでした。

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