2009年7月20日月曜日

『よろめき迷探偵(東京尋妻記)』のこと

〔えいが〕〔ちょっとお耳に〕

「よろめき」のルーツ

どうも。
トド@昼間のビールはおいしいねです。

えー、先週の土曜日(18日)、こちらでも上映会の告知をいたしましたが、新橋のTCC試写室(旧ビザール・クロッキークラブそば)にて『黒と赤の花びら』を鑑賞してまいりました。
暴風雨なのに揺れない船(その後遭難)で起こった殺人事件を発端に、三原葉子(腋毛なし)=ガガーリンという衝撃の展開を見せるサスペンスで、天知茂が事件の謎を追う過程で麻薬密売や売春組織が絡むというパターンは、かつての「地帯」シリーズの焼き直しのようでもありました。
しかし、悪役が弱いのと、展開が遅いのと、何より三原葉子がちっともキュートではないのが残念至極。
とはいえ、これらの不満も映画を観られたからこそのこと。
貴重な機会をお与え下さった上映会スタッフの皆様に、心から感謝申し上げます。

ビザール・クロッキークラブについて
お知りになりたい方は、この映画
ご覧下さい。三原葉子がキュートです。


さて。

今回の上映会会場であるTCC試写室。
こちらはあの国映経営の試写室であり、不肖せんきち、恥ずかしながら初めて足を踏み入れたのですが、ロビーに掲示されていた1枚のポスターにふと目が留まりました。
それは国映配給の倉田文人監督の映画でした。

「おや?倉田監督って、ピンク映画も撮っていたのかしらん?」

と思いつつ、ポスターにあるキャストの表記に目を移すと、「唐菁」と「美雪節子」の名が。

「こ、これって、もしかして、台湾の第一が製作した『東京尋妻記』のこと?」

まるでわたくしがここへ来るのを待ち構えていたかのような貴重な映画ポスターとの出会いに一人秘かにコーフンしつつ、メモ帳にポスターの記載事項を手短に書き写しました。

で。

以下が、ポスターにあったスタッフ・キャスト。

脚本:町新吉
監督:倉田文人
撮影:井上莞
音楽:伊藤宣二

主演:青木笑児、唐菁、美雪節子、谷川英子

ちなみに、『東京尋妻記』の台湾側(台灣電影資料庫)のデータは、下記の通り。

製片(製作):黃銘
導演(監督):倉田文人
編劇(脚本):孟壎
演員(出演):唐菁、美雲(原文ママ)節子
出品年:1958
國別:台灣
片長:2100

脚本が孟壎になっていますが、この方は本作以外の脚本執筆はなく、どうやら町新吉(この方のこともよくわからんのですけれど)の変名のようです。

この映画、左桂芳氏の「台灣電影微曦期與國際合作交流史(1900-1969)」(『跨界的香港電影』所収、2000年、康樂及文化事業署)には、


1957年(1958年の誤り・せんきち注)出品的《東京尋妻記》(日名:《東京滞在七日間》←この邦題も誤りね。せんきち注)、由台灣第一企業公司影業部在日本投資拍攝、導演倉田文人、男主角唐菁、女主角爲日本"新東寶"的美雪節子。全片在日本攝製、最初想以風景紀錄片形式、後來改成彩色大銀幕的劇情長片。


とあり、同論文の英文ヴァージョン("Cross Border Exchanges in Taiwan Cinema between 1900-69".『跨界的香港電影』所収)にスチール写真が掲載されています。
左氏の論文の記述から、不肖せんきち、てっきりシリアスな内容の映画なのかとばかり思っていましたが、ポスターの惹句は、


美しい人妻を追う迷探偵のよろめき奇行をお色気とユーモア溢れる娯楽ワイド作品


てな按配で、セクシー美人のスケスケ乳首写真がどーんと据えられており、どうやらコメディタッチの作品だった模様です。

となると、気になるのが日本公開の時期。
『跨世紀台灣電影實錄 1898-2000』(2005年、行政院文化建設委員會・國家電影資料館)の「1958年1月」の項には、


第一公司與日本東亞影片公司、東方影片公司(これらの会社に関しては詳細不明・せんきち注)聯合出品,倉田文人執導,唐菁與新東寶公司女星美雪節子主演的《東京尋妻記》殺青,將安排於近期在日本、台灣同步發行。


とあり、1958年に日本で公開される予定だったようですが、「キネ旬データベース」等を見ても『よろめき迷探偵』の情報がないため、実際にはいつ頃公開されたのか、現時点では全くわからない状態です。
ただ、そのタイトルに付された「よろめき」という言葉から類推すると、1958年から1961年前後、つまり国映がピンク映画に本格シフトする以前に配給・公開されたのではないか、と考えられます。
とはいうものの、ポスターのスケスケ乳首がちょいと引っかかるのですが、もしかしたら国映に何か他の資料が残っているかもしれないので、これからも引き続き調査していきたいと思います。

フィルムもあるといいのになあ…。

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