〔ほん〕
野崎歓著。2005年、青土社。
遅ればせながら、読了いたしました。
全八章から成る評論集の内、屋上(第一章 香港映画は屋上をめざす)から香港の街を俯瞰した後、下界へと降り立ち(第二章 無防備都市、香港)、やがておうちの中へと進入してゆく(第三章 走れ!香港恋愛映画、第四章 香港映画 一家団欒)前半部分の構成は、なかなか機知に富んだ仕掛でありました。
後半(第五章~第八章)はいわゆる作家論ですが、当方は第七章(街角の笑劇)と第八章(異星の客)を面白く読みましたです。
テキストクリティーク特有のもってまわった文体にちと疲労感を覚えるものの、香港映画への強い愛情がそこここにあふれた、熱血評論集と言えましょう。
が、それだけに惜しまれてならないのが、誤植と誤記の多さ。
すでに茶通さんのblogでも取り上げられていますが、当方も気付いた範囲で指摘しておきたいと思います。
改版が出るときには、ぜひとも訂正していただきたいものです。
・『天地長久』→『天長地久』(目次)
・『自梳』の舞台を「蘇州」にしていますが、実際は広東省のはず。よって、日本軍が侵攻してくるのは、蘇州ではなく広州。ロケ地はたしかに蘇州をはじめとする江南地方だったのですけれど。(90~91頁)
・(張艾嘉の・せんきち注)初監督作『最愛』→正確には第二作のようです。(124頁)
・シルヴィアの監督第二作が『今天不回家』→第九作。ずいぶん前に観たので記憶が曖昧なのですが、この映画(『今天不回家』)は台北が舞台の台湾映画だったはず。で、お父さん役は喬宏ではなく郎雄。喬宏のお父さん役を取り上げたいのであれば、『ラッキーファミリー(97家有喜事)』の方が適当でしょう。それに、郎雄演じるお父さんの話題を出したら、当然李安にも触れなければならなくなり、そうなると、収拾がつかなくなってしまうかも。(127頁)
・(『喜劇王』において・せんきち注)お色気バーで働く女子高校生セシリア・チャン→ホステスが女子高校生の制服を着て、客をもてなすキャバレーだったような気が・・・・。 (248頁)
・この『ジャジャンボー』(『ジャジャンボ』。中文タイトルは『説不出的快活』・せんきち注)は六〇年代ショウ・ブラザーズ映画の傑作メロドラマとして名高いウォン・ティンラム(王天林)監督の『野バラの恋』(『野玫瑰之戀』・せんきち注)で用いられた服部良一作曲の曲である。→この映画はもちろんショウ・ブラザーズ(邵氏)作品などではなく、そのライバルだったキャセイ・オーガニゼーション(電懋。MP&GI)の代表作の一つ。 (289頁)
版元さん、よろしくお願いします。
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