2006年9月11日月曜日

『禁男の砂』4種

〔えいが〕

"On The Sunnyside Of The Street"聴くなら、
やっぱりトミー・ドーシー(Tommy Dorsey)がいいね。

今週の『純情きらり』(すいません、なんだかんだいって毎日欠かさず観てます)。
『二十四の瞳』が終わったと思ったら(途中に『寺島しのぶの「サザエさん」』もあったけど)、今度は、

『穐吉敏子物語』

ですか?

劇中、ヒロイン・桜子ちゃんの好きな曲としてしばしば"On The Sunnyside Of The Street"が演奏されますが、この曲はもともと大恐慌の折のヒット曲。
たしかに、聴いていると(歌詞の内容も)元気が出てくる曲ですし、これまで数多くの人々がレコーディングしていますが、せんきち個人としては、トミー・ドーシー楽団(Tommy Dorsey and His Orchestra)とセンチメンタリスツ(The Sentimentalists)による演奏がベストだと思います。

さて、今日は旅日記はお休み。
先月こちらでもお知らせした、東アジアの隠れたスーパースター・泉京子の代表作である『禁男の砂』シリーズ全4作が9日・10日に上映されましたので、メモ程度の感想を4本一気にお届けいたしやす。

『海人舟より 禁男の砂』
1957年、松竹。堀内真直監督。大木実、泉京子、石浜朗、瞳麗子主演。

シリーズ第1作(中文タイトル:『男人禁地』)。
泉京子演じるあばずれ海女・ナギと昔の恋人・作治との愛憎を軸に、ナギに思いを寄せる年下の純情男・勇と作治に思いを寄せるお高、さらには勇に思いを寄せるトシも加わって、最後は悲劇を迎えます(『情婦マノン』チックなラスト)。
芥川賞受賞作の映画化ですが、ま、そんなことはどーでもよくて、海女の衣裳から透けて見える乳首をひたすら胆嚢、もとい、堪能する映画。
ナギが歌い踊る(歌がもう・・・・なんというか、ヘタレで)『バナナボート』の出来損ないみたいな海女の歌も、見もの(なのか?)。
香港の殿方が悩殺されたのもうなづけるざます。
以前取り上げた香港映画『紅葉戀』における唐突な海女さんサービスカットも、この映画の印象の強烈さを物語るものといえましょう(どうせなら陳寶珠にも海女役やってほしかったな)。
でも泉さん、あの踊りの実力のまま台湾へも行ったのだろか。

『続禁男の砂』
1958年、松竹。大木実、泉京子、瞳麗子主演。

シリーズ第2作(中文タイトル:『男人禁地續集』)。
「嵐の襲来、潜ってはいけない場所の存在、誰かが溺れる、村の祭礼、敵対する海女グループの争い、恋の鞘当、キャットファイト」等々、第1作で登場した要素をほぼそのまま踏襲しつつ、逃亡中の銀行強盗犯と海女の恋が描かれます。
舞台が北陸の孤島という点が、なかなかユニーク。
前作の『バナナボート』もどきに懲りたのか、本作での踊りは民謡系になり、歌も大木実が担当していました。
台湾人に大人気の和倉温泉・加賀屋も、ちょっこし登場。
ラスト、ヒロインは泣きながら(相手の男が刑期を終えるまで)「待ってるわ、いつまでも」とか言うんですけど、この男、不可抗力とはいえ相方も殺しちゃってますし、かなり長くかかるんじゃないのかなあ。

『続々禁男の砂 赤いパンツ』
1959年、松竹。岩間鶴夫監督。大木実、泉京子、小山明子主演。

シリーズ第3作(中文タイトル:『紅衭子』)。
以前にも書きましたが、1960年、本作が香港で公開されたさいに泉京子本人が訪港、宣伝にこれ努めたという映画です。
また、1966年には台湾で『海女紅短褌』という、あきらかに本作からヒントを得たと思われる映画が製作されています。
「嵐の襲来、誰かが溺れる、村の祭礼、敵対する海女グループの争い、恋の鞘当、キャットファイト」といった前2作の主要要素は残しつつ、今度は東京のモダンガール(死語)をキーパーソンとして配置し、彼女の来訪によってもたらされる悲劇が、物語の中心となります。
タイトルの『赤いパンツ』とは、東京からやって来た画家・小山明子の穿いていた赤いショートパンツのことで、下着ではありませんでした(あらぬ想像をしていたわたくし。ただし、その後に海女さんも皆赤いパンツを穿き始めるというおまけがあるのですけれど)。
この小山明子が、大木実が殺してしまった男の婚約者だった、とわかるあたりから話がずんずん飛躍し始め、男の親友役として渡辺文雄までもが参戦してきて最後に大演説をぶつという、なんだか大騒ぎの展開。
初めこそ大木実に対して親分風を吹かせていたものの、すぐに弟分になってしまった大泉滉もそこそこ笑かしてくれました。

『禁男の砂第四話 真夏の情事』
1960年、松竹。岩間鶴夫監督。小山明子、泉京子、石浜朗、瞳麗子主演。

シリーズ第4作(香港で公開されたか否かは不詳)。
海女ネタは3作で早々に尽き、いきなり180度方向転換、シンクロナイズドスイミングに励む乙女たちが主人公になって、泉京子は美貌の未亡人、お相手だった大木実はその兄(特別出演扱い)に収まっていました。
お話も青春ドラマとミステリーをドッキング、そこにちょっぴりエッチなテイストを加えたようなストーリーで、「乳首の透けて見えない『禁男の砂』なんて・・・・」とフラストレーションがたまる一方でおました(何観てるんだか)。
シンクロの場面は、水中撮影中心のため、きれいなお姉さんが浮かんだり沈んだりするのを見たいむきは、エスター・ウィリアムズ(Esther Williams)の映画をご覧になる方がいいのじゃないかと思います。

というわけで、シリーズはこれにて終了。
泉さんはその後大蔵映画(一応日台合作)でもう一度海女になりますが、あまりぱっとせずに終わったのでした。

付記:ここ(川崎市市民ミュージアム)の館内アナウンスの音楽は、なぜかマイナー。これで迷子のアナウンスなんかされた日にゃあ、泣くよ。

(於:川崎市市民ミュージアム映像ホール)

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