2006年10月19日木曜日

心有千千結 (The Heart With A Million Knots)

〔えいが〕

互いに反発しながらも惹かれあう2人なのでありました。

1973年、台湾(大衆)。李行監督。甄珍、秦祥林、葛香亭主演。

遅ればせながら、「侯孝賢映画祭」勝手に協賛企画。
侯監督が監督として一人立ちする以前の作品を取り上げてみますた。
一応、手持ちのソフトが何本かあったのですが、有力候補は「甄珍&秦祥林」もしくは「林鳳嬌&鍾鎮濤」の組み合わせで、せんきち的には「林鳳嬌よりも甄珍の方が好き」だったのと、どうせなら最初期の作品にした方がよかろうとも思い、この作品に決定いたしました(男優はハナから無視)。

本作では記録を担当。

でもせっかくですので、他の作品のクレジットだけでもご覧下さい。

『悲之秋』(助監督)。
王童が芸術指導。

『早安台北』(脚本)。

『天涼好個秋』(脚本)。

同上(助監督)。

本作は瓊瑤作品の映画化です。
超おおざっぱなストーリーは下記の通り。

看護婦の江雨薇(甄珍)は、気難しく癇癪持ちの孤独な富豪・耿克毅(葛香亭)の担当となりますが、誠意を以て患者に接する雨薇を耿は気に入り、自分の専属看護婦として自宅に招きいれます。
耿には3人の息子がいましたが、長男と次男は父の財産をあてにするだけで父子の間には諍いが耐えませんでした。
一方、三男の若塵(秦祥林)は正妻の子ではなく、耿と彼の秘書との間に生まれた息子でした。
秘書は息子の将来を考えて我が子を耿に託して自分は身を引き、若塵は耿の家で育てられるものの、家族の仲はうまくいきませんでした。
ある日、耿に結婚を反対された若塵は出奔、それっきり消息を絶ってしまいます。
3人の息子の中で若塵を最も気にかけていた耿は、何とかして若塵に戻ってきて欲しいと願っていましたが、雨薇の尽力によってようやくそれが適い、父子は再び共に暮らし始めます。
が、これに不満を持つ長男と次男が何かと干渉するようになり、その最中、耿は発作を起こして倒れ帰らぬ人となります。
死後、弁護士によって耿の遺書の内容があきらかにされましたが、それは意外なものでした・・・・。

登場人物を見ればおわかりの通り、紆余曲折がありつつも甄珍と秦祥林が結局はピッタンコくっ付くというお約束のキャスティングなんですけど、秦祥林は生身の甄珍を愛しているというよりは、甄珍に母親の面影を見ているという傾向の方が強いので、最後に立派な青年実業家となった秦祥林が甄珍と再会する件は、

ママ、見てみて!僕、こんなに成長したんだよ!

と母親からの承認を求める元不良息子のようにも思えました。

同じように、葛香亭が甄珍を気に入るのも、彼女を娘のように感じてというよりは無意識の内に妻や愛人の代わりを求めているような感じで、もしもこのお父さんがもうちょっと若くて元気だったら、父子と甄珍の三角関係成立!な展開になったであろうと容易に推測できます。

看護婦っていう職業がまた母性を象徴するような職業ですしねえ。

ついでに言うと、秦祥林の生母は葛香亭からは何も求めることをせず、自らは日陰の身に甘んじ、ついには息子を父親に託して異国の地(日本)で淋しく死んでゆくという、どこまでも男にとって都合のいい女に描かれています。
何ゆえに葛香亭とこの女性が愛し合うに至ったのかという、肝心の経過が全く描かれていないだけになおさらです。
それがまあ当時の愛人としてのあるべき姿だったのかも知れませんが。

映像的にはプロデュースを担当した白景瑞の生霊が李行にのり移ったのか(六条御息所じゃないんだから)、かなり過剰な描写が目白押しで、特に葛香亭が発作を起こして倒れる件は一言「くどい!」と叫びたくなりました。

顧嘉煇の音楽は、同時代の日本のテレビドラマにクリソツ。
思わず岡崎友紀の顔が眼に浮かびました。

ところで。

侯孝賢映画祭のパンフに掲載されたインタビューの中で、監督が海外からの帰国組に大変影響を受けた旨のコメントがありましたが、侯監督のような土着のたたき上げ組と楊徳昌をはじめとする帰国組、これに張艾嘉のような香港組が加わっての台湾ニューシネマという構図は、ちょうど李行の世代、つまり1960年代から70年代にかけての台湾の北京語映画全盛時代にも当てはまるような気がします。
すなわち、李行(たたき上げ組)、白景瑞(帰国組)、李翰祥、胡金銓(香港組)という構図がそれで、歴史は繰り返すということなのでしょうか。
となると、また同じようなムーブメントが(台湾映画に)やって来るのかしらん?

2 件のコメント:

  1. せんきちさんこんにちわ。映画、DVDになってたんですか~。知りませんでした。瓊瑤の小説の中で、私のベスト3に入るお気に入りです。実は1週間ほど前に読み返したばかりなんです。どう映像化されてるのか、見てみたいです。私も買わなきゃ~。教えてくださってありがとうございます。

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  2. hoisamさん

    こんにちわ。
    いえいえ、お役に立てて幸いです。
    大衆の映画は続々とDVD化されています。
    同じ豪客から出ている中影のDVDに比べると、こっちの方が(製品としての)質がいいみたいですね。

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