2008年11月12日水曜日

空飛ぶロダン

〔ちょっとお耳に〕〔えいが〕

元祖まりもっこり

どうも。
トド@人生に疲れますたです。
ちょっと目を離したすきに婆さんの床ずれが悪化、ドレッシング材を貼って気長に完治を待つ日々です。

さて。

学芸員Kさんのブログ「香港つめホーダイ」で教えていただいた雑誌『イラストレーション』11月号。
1950年代の香港映画の特刊(で、いいのかな。一応、ここではそう呼びます)の表紙写真が多数掲載されているというので(「画家 大竹伸朗が選んだ創作を刺激する本50 理性編・本能編」の内、「本能編」所収。雑誌内では「中国映画」とされていますが、どこからどう見ても香港映画です)、さっそく購入いたしました。

ざっと見渡したところ広東語映画が中心で、中でも新聯と光藝が多く、特に光藝作品が目立ちました。
で、光藝といえばニコパパ(謝賢)ですんで、『情賊』『999 廿四小時奇案』といったニコパパが表紙の特刊がそこここに。

追記:『999 廿四小時奇案』の特刊は、方保羅の『圖説 香港電影史』(1997年、三聯書店)102頁にも掲載されていますが、そちらが「写真:黒、タイトル:緑」だったのに対して、『イラストレーション』掲載の特刊は「写真:青、タイトル:赤」と、どうやら別本のようです。
って、なんだか書誌学的領域に入ってしまいますた・・・・。

不肖せんきち、電懋作品の特刊は何冊か所有しているのですが、それらの表紙がカラー写真なのに比べて、こちらの表紙はいかにもキッチュな2~3色刷。
でも、そこが逆に何とも言えぬ郷愁を誘います。

新聯と光藝作品以外ですと、邵氏の広東語映画も何本かありましたが、中でも『寶島神珠』(1957)は日本ロケを行った作品で、タイトルと特刊表紙(ビキニ姿に水中メガネのお姉ちゃんが網を持って立っている)から察するに、日本の海女映画の影響下にある作品のようです。

素晴らしきかな、海女映画!

また、日本映画の特刊も数冊ありましたので、中文タイトルと原題を対照させてみますた。

『飛天怪獣(空の大怪獣 ラドン)』


『地球防衛軍(地球防衛軍)』


『太空飛俠 大戦怪星人(鋼鉄の巨人 怪星人の魔城)』
『太空飛俠 大戦宇宙怪人(スーパー・ジャイアンツ 宇宙怪人出現)』
『海底覇龍(大巨獣ガッパ)』


『惹火美人魚(女真珠王の復讐)』
『絶海裸女(絶海の裸女)』
『四谷怪談之二 驚魂鬼火(東海道四谷怪談)』



特撮物&大蔵新東宝人気大爆発!

の様相を呈していますが、せんきちが以前取り上げた1961年4月14日付『報知新聞』の記事(海外へ進出する邦画)によれば、新東宝の作品は1本あたり360万円で香港や台湾へ輸出されており、他の5社作品に比べるとかなり単価が低かったせいもあって、「安く買ってたくさん儲ける」にはうってつけの映画だったのでしょう。
当時の香港映画にはない、エログロ描写も満載でしたし。

上記の日本映画群は、大半が1950年代後半の作品ですが、なぜか1本だけ1967年の『大巨獣ガッパ』がありますた。
これも香港における特撮物の人気を物語る現象の一つ、と言えるでしょうか。
ちなみに、『飛天怪獣(空の大怪獣 ラドン)』の特刊表紙は、『跨界的香港電影』(2000年、康楽及文化事務署)の113頁にも、図版(白黒)が掲載されていますが、なぜか英文表記が、

RODAN

になっています。

考える人が空を飛ぶ・・・・(あ、でも、ロダンはRodinか)。

さらに、『絶海裸女(絶海の裸女)』は新東宝作品であるにも関わらず、

日本東寶公司出品

と、思いきり間違えており、表紙には

オパーイ丸出しのお姉ちゃんが2人

波間に漂っているイラストが掲載されていますた。
はたして実際の作品に、オパーイポロリがあるのかどうか、不肖せんきち、当該作品を未見なので、確認できておりません。

『イラストレーション』内の説明によれば、大竹氏が所蔵している特刊は全部で約100冊。
誌上には70冊の表紙が掲載されており、(同じものもあるそうですが)今回掲載されなかった他の作品の特刊も見てみたいものですし、資料的にもかなり価値のあるものだと思います。

付記:学芸員Kさんもお書きになっていらっしゃいますが、「理性編」のトップに『大図解 九龍城』が登場しています。
この本の著者である九龍城探検隊・隊長のSさんは、3年ほど前、お亡くなりになりましたが、晩年、当方も親しくお付き合いさせていただきました。
Sさんがお元気だったら、この雑誌をお見せしたかったです。

2 件のコメント:

  1. 取り上げてくださってありがとうございます。

    私など、当時の映画に詳しくありませんので「イラストレーション」に載ってることを紹介しただけでしたが、さすがのせんきちさんの解説で「へえ!」です。

    写真を見て「東宝出品のがあるな」と思っていたのですが新東宝なんですか。笑いました。

    当時の香港の映画館に行ってみたいです。

    それにしても大竹氏はこれらを1冊20円くらいで買ったというのですから、「俺もあんとき買っときゃ」と悔しい気もします。たぶん「1香港ドル」という値付けで売ってたと思うのですが、お宝がタダ同然だったのですね。

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  2. 学芸員Kさん

    こんにちわ。

    〉1冊20円。
    今だとこれに0が2つは付きそうです。
    当時は全く顧みられることがなかったのでしょうね。

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