2006年2月11日土曜日

トミイの『蘇州夜曲』

〔ちょっとお耳に〕


香港でも「蘇州」

突然ですが、12日から香港に行ってきます。
着いた日に電影資料館で楚原の映画を観るという「老電影迷の鑑」のようなことをするとかっこいいのでしょうけれど、たぶんそれは無理ということで。
電影資料館には翌日行く予定です。
帰ってきたらまたお会いしましょう。

さて、お出かけ前に一発。

1月17日に書いた記事(「王女と私」)の中で、大映と邵氏が合作映画『王女と私』の主役に李麗華を検討していたという台湾の報道をご紹介しましたが、その後もしぶとく古新聞漁りを進めたところ、今度はこんな記事(1961年6月24日付『聯合報』)が見つかりました。

邵氏將與東映合作 拍攝「蘇州夜曲」 由李麗華和大川橋藏主演

邵氏ったら、東映にも李麗華を売り込んでいたのか。

記事によると、映画の内容は香港と日本の風光明媚な景勝地を背景に、香港女性と日本青年の恋愛物語を描くというもので(なんでタイトルが「蘇州」なんじゃ!)、東映としては時代劇俳優のトミイが現代劇の主役を演じるというのがウリだったようです。
記事には東映山崎企画部長の、

大川橋蔵を現代劇に出演させるという計画は早くからあったが、それが香港との合作、しかも李麗華がヒロインなんて、これ以上理想的なことはない。月末には監督やその他のキャストを決めたい。

なるコメントが紹介され、クランクインは9月、さらに東映がスカウトした台湾スター・林沖の出演も予定されている、とありました。

でもなあ。
本郷功次郎ほどじゃないにしろ、やっぱり釣り合いが取れないような気が。

というわけで、この話も案の定ボツに。

東映としては、日本である程度の知名度はあるけれども年齢的に尤敏よりかなり上の李麗華よりも、尤敏と同年代の(日本では)未知の女優を一から売り出したほうが東宝と対抗しやすい、という計算が働いたのかも知れません。

しかし。

そんな意図のもとに起用したはずの樂蒂にも、「既婚プラスおめでた」という当時の日本の芸能界においては致命傷となりかねない重大事態が発生、(何度も書いているように)これまたボツとなるのですが。

ま、それでも仕切りなおして他の企画で合作をすればよさそうなものの、合作の作業を邵氏と進めて来た東映東京撮影所では、この頃(1962年)になると(前年から始めた)「ギャング映画」の路線が好調で、「合作なんかしなくても、自分たちだけでやっていけるよ」という気分になったのか、樂蒂の売出しのみならず合作計画自体がお釈迦になったのでありました。

さよなら、トミイ。

付記:森岩雄の『私の藝界遍歴』には「有名な製作者張善琨とこの李麗華を中心に、日本と香港の合作映画を作ることでしばしば相談し合ったが、結局適当なシナリオを得ることが出来ずに、まとまらないで終ったことはいまだに残念に思っている」とあり、李麗華は合作映画の話が持ち上がる度真っ先に名前の挙がる存在でしたが、最終的にはどれもうまくいかなかったようで、こと日港合作映画に関して言えばなんとも不運な女優さんだったのでした(『海棠紅』除く)。

2 件のコメント:

  1. あぁあぁあっ!おそかりしー!もうお出かけですね。私も原楚には行きたくても行けない(涙)。芸術節の京劇も3時間半はキツイ。
    お互い香港を楽しみましょう!収穫リポート、楽しみにさせていただきます。

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  2. もにかるさん

    こんにちわ。
    もにかるさんもお出かけなのですよね。
    当方は、先ほど帰ってきました。
    いろいろとすごい映画(旧作)を観てきました。たまげました。
    またこちらで取り上げます。
    ではでは。

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