2007年7月11日水曜日

朱洪武續集劉伯温傳 (A Story of "Lou Bo-Wen")

〔えいが〕

今日のネタとは何の関係もありませんが。
明日、觀塘の支店がオープンだそうです。

1971年、台湾(台旭)。湯慕華(湯浅浪男)監督。游龍、曹健、唐威主演。

梅雨ですね。
蒸し暑いですね。
カビに注意して下さい。

本題に入る前に、ちょっと情報。

7月7日(土)オープンしたミニ・シアター「神保町シアター」で、14日(土)から「こどもたちのいた風景」というテーマによるレイトショーが開催されます(8月15日〔水〕まで)。
ただし、レイトショーといっても、元々がポケモン上映用劇場なので、18:45~の1回限りというやけに早い時間帯の上映です。
上映作品等、その他詳しいことは公式サイトをご参照下さい。

以下は、本題。

今日ご紹介するのは、1966年、台湾へ渡った湯浅浪男監督が彼の地に帰化後、中国名「湯慕華」名義で撮影した中の1本です。

湯浅監督が台湾へ帰化したのは1971年6月のことで、同年7月13日付『聯合報』には、

導演湯慕華 正式帰化 領到身分證 成為中國人

という見出しの記事があります。

それによると、湯浅監督は2年前(1969年)に帰化を申請後、1971年6月1日になってようやく中華民国の身分證を取得したとの由。
旧満州、中国東北部生まれの湯浅監督は中華文化と台湾の人情味に触れて帰化を決意、今では中華民国(国府時代の記事なので、台湾と中華民国の記述が入り乱れてしまいますが、その点ご容赦)を真の故郷と思っていると語っています。

念のため、湯浅監督の台湾での作品をこれまで判明した分のみですが、掲げておきたいと思います。

・「湯浅浪男」名義
『霧夜的車站』(1966)『東京流浪者』(1966)『懐念的人』(1967)『難忘的大路』(1967)『尋母到東京』(1967)『青春悲喜曲』(1967)『法網難逃』(1968)
(この内、『懐念的人』は昨年から今年3月にかけて開催された台湾語映画50年の特集上映で取り上げられました)
・「湯慕華」名義
『飛龍王子破群妖』(1969)『二郎神楊戩』(1970)『桃太郎斬七妖』(1970)『魔笛神童』(1970)『甘羅拜相』(1971)『妙想天開』(1971)『朱洪武續集劉伯温傳』(1971)
(この内、『甘羅拜相』はアジア映画祭参加作品・・・・だそうな)

湯慕華に改名以降の作品は、タイトルから察するにお子ちゃま向け特撮時代劇がほとんどのようですけれど、同時期に同じく台湾で映画を撮っていた小林悟監督の映画も『月光大俠』とか特撮時代劇っぽいタイトルの映画が多かったように記憶しています(もともと「『まぼろし探偵』の続編を撮ってくれ」と口説かれて台湾へ渡ったのだそうです、小林監督の場合)。
流行りだったんでしょうか。

ところで、湯浅監督ははじめ台湾語映画を撮っていたので、せんきちはてっきり台湾語映画の製作会社の招きで渡台したのだとばかり思っていましたが、先述の記事には潘壘監督に誘われて台湾へ渡ったとありました。
っつーことは、北京語映画ですか?

ちなみに、そのとき湯浅監督と一緒に台湾へ渡ったのがカメラマンの中條伸太郎。
結局、彼も台湾へ骨を埋めることになるのですが、「台湾電影筆記」の中條のプロフィールには、

湯淺導演回日本之後

とあり、あたかも湯浅監督が1人でとっとと日本へ帰ったかのような表現になっています。
帰るどころか台湾に帰化するという、中條よりももっと台湾にどっぷりとハマっていたのですけれど。

とまあ、前置きが長くなったところで、映画の内容ですが、劉伯温(劉基)の助けを得て朱洪武(朱元璋)が明を打ち立てるまでを描いた特撮時代劇でおます。
「續集」にふさわしく(?)、のっけから巨大な怪物に狙われて逃げ惑う朱洪武少年と劉伯温のシーンから映画は始まります。

ここで大フューチャーされているのが、

特技導演 林黒石(撮影も)

なんですけど、これって実は黒石恒生の変名です(照明も日本人〔大塚勝雄〕が担当)。
黒石は、1969年にも八木正夫や三上睦男等と共に台湾映画(『乾坤三決鬥』)の特技を担当していますので、2度目のお勤めということになるのでしょうか。

以下、特撮大放出!とばかりに何かといえば大嵐に地震と、「中国=天変地異のデパート」という間違った認識を植えつけてしまいそうなスペクタクルシーン連発でした。

とはいえ、親子で楽しむ映画としてはそこそこよく出来ていたと思います。
封切日時(1971年12月31日)を見るとどうやらお正月映画(旧正月じゃないけど)だったみたいで、その辺り(親子連れ)のニーズにはきっちりと応えられていました。

でも、特撮が大掛かりなのに比して、通常のセット撮影(オープンセット除く)の装置がちゃちかったのは何ゆえかしらん。
特撮でお金を使い果たしちゃったとか?

付記:本作で少年時代の朱洪武を演じている游龍は、山内鉄也監督の邵氏作品『梅山收七怪』では哪吒を演じています。

(於:香港電影資料館)

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