2005年4月22日金曜日

喪服の訪問者

〔テレビ〕

1971年11月23日~12月28日、日本テレビ・国際放映。石井輝男監督。団令子、関口宏、丘みつ子、大塚道子、柳生博主演。

「火曜日の女」シリーズの1作。6話完結のサスペンスで、石井輝男監督が手がけたテレビドラマの中でも、特に評価が高い作品。
実は昨日で全6回の放映が終了しておりまして(チャンネルNECO)、一応まとめて感想文を。
大まかなストーリーは、下記の通り。

世田谷の閑静な住宅街に住む銀行員夫妻(関口宏、丘みつ子)は、箱根へドライブに出かけた帰り、誤って通りがかりの男性をはねてしまいます。
織原と名乗るその男性は幸い怪我もなく、互いに名刺を交わして別れますが、数日後、彼が死亡したという記事が新聞に掲載されます。
自分たちの起こした事故が露見して目前に控えたロンドン赴任がふいになることを夫妻が恐れていると、織原の妻という女性(団令子)から葬儀の連絡がきます。
その後、夫の許をたずねて来た織原夫人は、自分の不幸な身の上を切々と語り、罪の意識にさいなまれた夫は自分たちが起こした事故のことを告白してしまいます。
が、織原夫人はなぜか夫妻を咎めませんでした。
織原と住んでいた家を出て足が不自由な姉(大塚道子)と共に新しい住まいに移ることにした織原夫人に、夫は新居が見つかるまで自分の家へ住むようにと提案、姉妹は夫妻の家へ越してきます。
しかし、姉妹はいっこうに新居へ越す気配もなく、夫妻の周辺では不可解な出来事が次々と発生、さらには織原夫人が夫を誘惑するそぶりまで見せ始めます。
不信感を抱いた妻は姉妹の過去を調査、芦屋育ちという出自が全くのウソで、神戸の貧民街で育った元ホステスだったことをつきとめます。
また、織原夫人は神戸へいた頃すでに最初の結婚をしており、その夫も不可解な死を遂げていたのでした。
一方、夫のところへは事故を目撃したという男・山岸(柳生博)が、しつこく訪ねて来ていました。
実は山岸は、織原夫人が横浜でホステスをしていた頃、彼女を追い回していた客でした。
妻は織原夫人の2人の夫の死の謎に迫るべく調査を続けますが、それを知った姉妹の魔の手が彼女に襲い掛かるのでした・・・・。

第1回から怖ーいドラマでしたが、一番怖かったのは大塚道子演じる車椅子のお姉さん。
24時間厚化粧(妖怪人間ベラメイク)で、趣味は昆虫採集、「糖尿病が持病」と言いながら角砂糖をぼりぼりかじり、突然発作を起こしてのた打ち回ります。
最後の回で、この人のあっと驚く秘密が明らかにされますが、これを観て思い出したのが、石井監督を師と仰ぐウー先生(呉宇森)の『狼たちの絆(縦横四海)』における發哥。
テレビドラマだからまさか観ていないとは思いますけど、こんなネタまで同じとは。

団令子も、妖しい魅力で見せます。
この頃になるとかなり痩せて鶏がら状態だったため、ときおり観てて辛かったりするんですけど、それが却って謎めいた雰囲気を増幅させていました。
いつもカツラだし。
10代の頃の場面では「ガード下の靴磨き」みたいなスタイルで登場、ノリノリでハーモニカを吹いていました。
客の取り合いでライバルホステスを刺す場面でも、やっぱりノリノリ。
石井監督のインタビュー(『東映ピンキー・バイオレンス 浪漫アルバム』所収)には、

テレビで団令子と組んだ時は、逢った瞬間「いいな」と思ったら彼女もそうだったらしいのね。そしたらもう打ち合わせなしでしたけど、バッチリでしたよ。

とありますので、お2人はかなり波長が合ったみたいです。
当時の映画界の都合で実現しなかったけど、お2人が組んだ映画も観てみたかった気がします。

丘みつ子は、ミニスカートに白の靴下という若妻ファッションに止めを刺します。
彼女が姉妹の過去を追い求めて神戸や横須賀、横浜といった港町のあやしい地帯を歩き回る件は、テレビという制限ありの描写ながら、石井監督ならではの映像でした。
特に、横須賀の米軍兵相手のお店が立ち並ぶ一帯を彷徨う丘みつ子が、石橋蓮司や白石奈緒美といった怪しい面々に出会う場面は、輝男色全開でした。

髪の毛の分け目が普通な柳生博も、ある意味見ものかも。
関口宏は鈍感なバカ亭主で、観ていてイライラしました。

最終回のクライマックス、危機に瀕する若妻と、彼女を追い詰める姉妹の描写はかなりくどくて、「さっさとやっちまえよ!」と初めは思ったのですが、このねちねちしつこい悪趣味な感じも石井監督らしい(?)のかなと後で考え直しました。
そのわりにあっけないラストとの落差が、また何とも言えませんでした。

このドラマ、最終回が12月28日の放映だったそうですから、昔は年の瀬にこんな怖いドラマを観てたんですね。
おトイレ行けなくなっちゃうよ。

(於:チャンネルNECO)

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