2007年5月19日土曜日

村木忍、中国芸術と東方電影について語る

〔ちょっとお耳に〕

『花團錦簇』より。
まるっきり東宝ミュージカル映画なセット。

久々の古新聞ネタですが、その前にお知らせ。

5月10日に発売されるはずだった『異國情鴛』のDVDですが、延期になった模様です。
いつの間にかリストから外れていました。

ほんとに出るの?

てなわけで、本題。
「勝手に國聯特集」関連企画(こじつけ)。

1963年12月31日付『聯合報』に「日籍佈景設計師村木忍談中國藝術和東方電影」なる記事があり、それによれば、國聯の映画『一代妖姫』の美術を担当するため李翰祥監督の招きで11月20日から台湾に来ていた村木忍が昨日帰国、村木は来年(1964年)1月下旬に再び来台して今度は国際映画祭に出品する予定の國聯の新作映画の美術を担当する、とありました。

が。

今日残っている國聯の作品リストを見ても『一代妖姫』というタイトルの作品は見当たりませんし、1964年1月の『聯合報』には村木忍来台の記事を見いだすことはできませんでした。

これはいったい・・・・?

せんきちが思うに、『梁山伯與祝英台』ではわざわざ日本で「化蝶」を撮ったにも関わらず、仕上がりが気に入らなかったのかばっさりカットしちゃった李監督のこと、今回の件でもいざ撮影の段になって「やーめた!」と放り出してそのままお蔵入りになったのではないかと。

ちなみに、記事によると『一代妖姫』は中国上古時代の物語で、国際映画祭に出品予定の作品(タイトル不詳)は『聊斎志異』に材を取った作品だったそうです。

と、まあ、そんな具合で製作されることのなかった(らしい)村木忍の國聯映画でしたが、この記事の中には「彼女は大学時代に中国絵画に興味を持ち、香港の邵氏に招かれて『千嬌百媚』の美術を担当したさいには、劇中劇の『孟姜女』において中国の山水画を応用したセットをデザインした」との記述があって、以前拙ブログで書いた莫蘭詩が村木忍の変名であり、『千嬌百媚』の他にも『花團錦簇』と『萬花迎春』の美術を受け持っていたことがこれではっきりといたしました。



どちらも『千嬌百媚』より。
『孟姜女』の場面。

さらに、記事中において村木忍は李監督の『倩女幽魂』を絶賛、溝口健二監督と稲垣浩監督もこの映画を観て藤本真澄に「たいへん素晴らしい映画だ」と語っていたという話をしていますが、そもそも1956年に亡くなった溝口監督が『倩女幽魂』(1960年)を観ることは不可能でして、これがもし本当ならば、

まさにゴースト!

なエピソードになってしまいます。

おそらく、溝口監督が観たのは『倩女幽魂』と同じく『聊斎志異』から材を取った陶秦監督の『人鬼戀』だったのではないかと思います。
陶秦監督は『楊貴妃』の脚本も担当していますし、一般公開されることはなかったものの『人鬼戀』の日本における上映権は大映が持っていたそうですので。

以上、なかなか興味深い内容の記事でありましたが、『一代妖姫』の美術がどのようなものだったのか、製作されなかったのが非常に惜しまれますです。

(無理やりなオチで強制終了)

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