2005年12月26日月曜日

『千嬌百媚』のことなど

〔ちょっとお耳に〕


楊貴妃』のところで『千嬌百媚』のことにちょこっと触れましたが、そのついでにこの映画の撮影と美術について気になっていることを少し書いておきたいと思います。

西本さんの聞書である『香港への道』巻末の「西本正 略歴/フィルモグラフィー」によれば、『千嬌百媚』は西本さん、すなわち賀蘭山が撮影を担当したことになっています。
しかし、実際の作品には賀蘭山のクレジットはなく、

高詩綿

なる人物が撮影担当となっています。

それから、同じく『香港への道』によると、本作は村木忍が美術を担当したことになっていますが、これもやはり実際の作品には村木忍のクレジットはなく、

莫蘭詩

なる名前の人物が美術担当になっています。
ま、莫蘭詩は「もーらんしー」あるいは「もっらんしー」と読みますので、「むらきしのぶ」の「むら」を「もーらん(もっらん)」、「しのぶ」の「し」を「しー」とした、つまり村木忍の中国名と考えることも可能と言えるでしょう。

ただ、この莫蘭詩、本作の他にも2本、邵氏作品の美術を担当しておりまして、それが『花團錦簇』と『萬花迎春』です。
となると、仮に「村木忍=莫蘭詩」であるならば、村木忍は『千嬌百媚』だけでなく、『花團錦簇』『萬花迎春』と、計3本の邵氏作品において美術を受け持ったということになります。

ここで撮影のことに話を戻すと、『千嬌百媚』は日本でロケを行い、また、ダンス場面も日本で撮影を行ったそうですので、撮影の高詩綿は日本人である確率が高くなってきます。

ではいったい、高詩綿とは誰なのでしょう?

村木忍=莫蘭詩だとして、監督の陶秦が中華電影出身であることも考え合わせると、本作の日本ロケやダンス場面の撮影に際しては東宝が協力を行った可能性が大きく、ならば、「高詩綿=東宝のカメラマン」と考えられます。
高詩綿は「かおしーみあ(え)ん」あるいは「こーしーみん」と読みますが、これが日本のどんな姓の変名になるのか、全く想像がつきません。
もしかしたら「小泉(こいずみ)」かしらん、とも思い、それだったら、

小泉一

ないしは、

小泉福造

あたりかな、と勝手に推測してみたものの、何の確証もありません。

誰なんでしょう、高詩綿って。

ちなみに、莫蘭詩が美術を担当した『萬花迎春』のカメラマン・戴嘉泰(だいじあたい、だいがーたい)は、『紅樓夢』の撮影も担当した高田秀雄の中国名です。
でもこの映画(『萬花迎春』)のミュージカル場面、『千嬌百媚』のそれと比べると、なんだかよろしくないんですよねえ。
邵氏としては、西本さんが推薦した日本人カメラマンだし、西本さんはほとんど李麗華と林黛の専属みたいになっているので、樂蒂はこの人で行こうと考えたのかも知れませんが、残された作品を観ると、樂蒂がちょっと気の毒になります。

てなわけで、オチがつきませんが、高詩綿について何かご存知の方がいらっしゃいましたら、ご教示下されば幸いです。

付記:『千嬌百媚』、タイトルバックで服部良一の『ジャジャンボ』が使われています。中国語の歌詞ですが、『説不出的快活』とは違うものでした。姚敏(本作の音楽担当)が、師匠の曲に敬意を表したということになるのでしょうか。

『千嬌百媚』の1コマ。
子怡ちゃんも裸足で逃げ出す林黛の和服姿。

こちらは別の映画(『雲裳艶后』)から。
子怡ちゃんのうん○舞妓ヘアーのルーツ?

0 件のコメント: