〔えいが〕
1965年、日本・台湾・香港(東宝・台製・電懋〔國泰〕)。福田純監督。山崎努、張美瑤、宝田明、石山健二郎、水野久美、馬驥主演。
宿題になっていた『バンコックの夜』について書く前に、先にこちらのことを書いておきます。
寶島玉女・張美瑤(チャン・メイヤオ)の東宝における主演第1作(初お目見えは、『戦場にながれる歌』)。
香港からの麻薬密輸を捜査する日本及び香港警察の奮闘に、日本人警部と香港女性の悲恋を絡めたサスペンスタッチのメロドラマ(で、いいのか?)。
当初のタイトルは『香港-東京999(スリーナイン。銀河鉄道じゃないよ)』と、犯罪映画色の濃いものでしたが(シナリオ第3稿による)、その後、『香港の白い薔薇』というロマンチックなものに改められました。
タイトルバックには東宝と台製の名前しか出てきませんが、じっさいには電懋(この年7月、國泰機構に改組)もイッチョカミしています。
彼女が東宝映画に出ることになった直接のきっかけは、1964年に台北で行われたアジア映画祭で森岩雄に見出されたことによるのですが、実はこのとき、彼女の後ろ盾で「台製中興の祖」と言われた台湾電影製片廠廠長の龍芳が電懋オーナーの陸運濤らと共に飛行機事故死するという不幸に見舞われています。
あの飛行機事故は、香港映画界のみならず、台湾映画界にとっても大きな痛手となったのでした。
さて、かんじんの映画についてですが、つまらなくもないけど面白くもない、なんだか残念な仕上がりの映画です。
犯罪映画として見せるのか、それとも主人公2人の悲恋に重きを置くのか、そのあたりが中途半端なため、どっちつかずに終わっています。
ただ、これまでの東宝の香港ロケ映画(杉江敏男監督や千葉泰樹監督作品)とは一線を画し、あちこちの街頭でロケをしている点は評価できます。
跑馬地(ハッピーバレー)の競馬場や客家の城壁村(吉慶圍じゃないと思うけど)をはじめ、『東京ギャング対香港ギャング』にも出てくる聖馬利亞堂もちらりと映ります。
太白(タイパック)が登場するのも、『東京ギャング対香港ギャング』と同様。
聞き込みをするシーンでちょこっと映る派手派手な廟は、調べてみたところ、どうも「廟街社壇觀音樓」らしいことがわかりました(っつーことは、廟街なのか、あそこ)。
また、宝田明扮する宇津木が営む貿易会社・宇津木商事が入るビルは、『香港の星』の王星璉(尤敏)の家の並びでした(天文臺道)。
ちなみに、東京での野外ロケシーンは、東京オリンピック後ということもあってか、オリンピック関連施設をバックに山崎努と張美瑤がそぞろ歩く、なんていうシーンがありました。
張美瑤は、モーターボートをぶっ飛ばすジャズ好きお嬢様(アート・ブレイキー登場!)。
『ホノルル・東京・香港』の尤敏ほどかっ飛んではいませんが、怒りのあまり山崎努に往復ビンタを食らわすこともある、かなり気の強い女性です。
当時の映画評を観ても彼女に対してはおおむね好意的な評が多く、事実、よくがんばっているなと思うのですけれど、いかんせん、映画自体が低調過ぎました。
山崎努はなんだか冷静過ぎて、ほんとに張美瑤のことを愛していたのかがよくわからないまま。
台詞の中では「好き」と言っていますけど。
『東京ギャング対香港ギャング』で香港ギャングのボスをやっていた石山健二郎は、今回、日中戦争に従軍経験があるので北京語が出来る警部補という設定でしたが、いやはや、すごいです。
何言ってるのかじぇんじぇんわかりましぇん。
香港ギャングのボス役の時の広東語もすごかったですけど、こちらはそれをも凌ぐ驚異の北京語。
あ、でも、『香港クレージー作戦』のときも中国人役だったな、石山さん。
恐怖の中国語大王。
最後にもひとつ。
『ホノルル・東京・香港』で数寄屋橋交番のおまわりさん役だった藤木悠、本作では海外栄転(?)を遂げて、香港警察のおまわりさん役におさまっていました。
数寄屋橋交番→香港警察→Gメン'75
なるほど、そういうことだったのね。
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