2014年4月27日日曜日

地獄新娘

〔えいが〕

劇中に登場する台中駅。

どうも。
トド@いつも眠くて困りますです。

さて。

先月開催された大阪アジアン映画祭にて「台湾語映画、そして日本」という小特集が組まれ、台湾語映画全盛期(1950~60年代)に制作された作品の中から『温泉郷のギター(溫泉鄉的吉他)』が上映されました。
日本における映画祭で台湾語映画全盛期の作品が上映されたのは、おそらく、今から17年ほど前に三百人劇場で開催された「台湾映画祭」以来(その折の上映作品=『君を送る心綿々(送君心綿綿)』)なのではないかと思われ、非常に画期的な出来事だったのですが、不肖せんきちもこの機会に便乗して(今回の上映に当たっても少しお手伝いをさせて頂きました)、台湾語映画のご紹介なんぞを。
まずは、作品データから。

1965年、台湾。辛奇監督。金玫、柯俊雄、歐威、他。

超おおまかなストーリー:王義明(柯俊雄)の妻が義明の従兄弟と洋上で謎の事故死を遂げますが、その死体はなぜか見つからないままになっていました。
一方、義明の妻の生き別れになった妹・白瑞美(金玫)は姉の死の真相を探るため、身分を偽って姉の娘の家庭教師になります。
初めこそ反目し合う義明と瑞美でしたが、やがて二人は恋に落ち、結婚の約束を交わします。
 しかし、意外な人物が瑞美の命を狙うのでした……。

"地獄の花嫁(地獄新娘)"というと、なにやらおどろおどろしいタイトルですが、本作の原作はヴィクトリア・ホルト(Victoria Holt)の"Mistress Of Mellyn"(米蘭夫人)で、この小説は日本でも『琥珀色の瞳の家庭教師』というタイトルで翻訳が出版されています。
1965年というと、北京語映画の世界では後に一大ブームとなる文芸愛情映画(文藝愛情片)の先駆ともいえる作品(『婉君表妹』『菟絲花』等)が生まれ始めた時期に当たりますが、この映画もそれらの中に加えたくなるような文芸作品に仕上がっています。
特にファーストシーンはこれから起こる不吉な出来事を予感させるに十分なもので、とかく低予算&粗製濫造と言われがちな台湾語映画において、きわめて誠実な作品作りが行われていたことはもっともっと記憶されるべきでしょう。
さらに、台湾語映画におけるこのような文芸映画の存在は、当時の台湾語映画のジャンルの幅広さを物語るものといえます。

ヒロインを演じた金玫は以前このブログで取り上げた『懷念的人』でも主役でしたが、当時、白蘭と人気を二分した台湾語映画を代表する女優の一人で、白蘭が後に北京語映画に転じたのに対し、最後まで台湾語映画一筋だったようです。
せんきち的には、北京語映画でも十分やっていけるだけのノーブルな美女だったと思うのですが。

金玫

お相手の男優二人は後に北京語映画に移って大スターになりましたが、柯俊雄はご存知の通り現在でも活躍中、そして歐威は惜しくも早世したものの今なお台湾の人々に記憶され続けている名優で、彼らの台湾語映画時代の仕事ぶりを知る上でもこの作品は貴重な映画といえるでしょう。

台湾語映画史のみならず、台湾映画史の中で極めて重要な作品のひとつと言ってよい作品です。