2008年6月2日月曜日

密密相思林 (My Sweet Memory)

〔えいが〕

コスプレ?

1976年、台湾(中影)。張佩成監督。李菁、梁修身、郎雄主演。

中影製作のトンデモ抗日&間違った原住民映画。
日本統治時代の阿里山を舞台に、互いに惹かれながらも時代に翻弄されて離れ離れになった原住民の青年(梁修身)と日台ハーフの女性(李菁)が、長い歳月を経てついに再会するまでを描いた作品・・・・とだけ書くと、なんだか「ちょっとええ話」みたいですけど、なんせこちとら抗日映画ですから、

いついかなる時代に於いても台湾は中国の一部だったのであり、それは日本統治時代にあってもなんら変わることはない。したがって、原住民も、本省人も、本省人と日本人のハーフも、皆々生きているんだ友達なんだ、じゃなくて、

台湾住民は皆中国人なのである。


という無理やりすぎる論理に基づいてストーリーが構築されているため、ヒルマンならずとも、

シンジラレナーイ!

と叫びたくなるような場面がてんこもりざます。

今、試みに、その例をちょこっとだけ挙げてみると・・・・。

郎雄演じる阿里山鉄道の機関士はなぜか瀋陽出身で(日本人が機関車を運転すると何か都合の悪いことでもあるのか?というか、日本人が機関車を運転できること自体認められないのだろうな、国府的には)、原住民(おそらく鄒族)の言語はもちろん、台湾語も日本語もわからない彼がどうやって暮らしているのかと思ったら、原住民たちは皆流暢な北京語を話し、郎雄は何の苦労もなく彼らと意思の疎通を図っているのでありますた。

シンジラレナーイ!

李菁の父(日本に留学した台湾人。日本女性と結婚して娘〔李菁〕をもうけるが、妻は死去)が経営する林業会社が日本軍に接収されることになるが、悪辣な軍人・藤澤(田野←田野はこんな役ばっかやってるね)によって父の部下が惨殺されると、その仕打ちに憤った原住民の長は藤澤に向かって、

ここは中国だ!

と叫ぶのでありますた。

シンジラレナーイ!

とにかくこの映画ときたら、原住民をはじめ、日本に長く暮らし日本女性を娶った本省人やその子供である日台ハーフの女性までもが、

自分は中国人なのだ。

という強烈な意識を持っているのであります。
思うにこれは、原住民や本省人の「日本情結」に対する国府の教育的指導といった側面が色濃く出ているのでしょうが、しかしそれにしても、当時台湾に相当数いたであろう日本人と本省人のハーフの人々に対してまで「お前たちは中国人なのだ」と説教するのは、大きなお世話以外の何ものでもありません(武、どうする?)。
「いくら抗日映画だからといって、この程度の映画しか作れないから内戦にも負けちゃうんだよ」と、嫌味の一つも言いたくなりますわ。

実はメインのストーリーよりも不肖せんきちが興味を持ったのは、李菁演じる日台ハーフの女性が心ならずも阿里山を離れることになった、それ以降の人生。
彼女は日本名・外山賢子を捨てて中国名・陳玉貞を名乗り、中国人としてシンガポールに移住、やがて台湾を再訪するのですが、何ゆえにシンガポールへ移り住むことになったのか、その説明はいっさい無いまま。
彼女の内面をもっと知りたかった気がします・・・・って、どだい無理な話か。

この帯を見よ!

付記:田野演じる極悪軍人の名前が「藤澤」というのは、阿里山といえば樟脳、ということからの連想でしょうか。

0 件のコメント: