2009年6月18日木曜日

続 第1回世界映画祭 (大きく出たねえ)

〔えいが〕〔ちょっとお耳に)


どうも。
トド@引き続き取り込み中です。
以前にもちょいと書いたことがあるかと存じますが、2月の定期健診の折に見つかった甲状腺腫瘍(良性)のことで、新しい担当医とのコミュニケーションがどうもうまくいかないもので、今後の対策をいろいろと思案中です。
先日など、ロクな説明もなし(以前の担当医の下でヨード造影剤を用いたCT検査を行った際には、詳しい説明と検査同意書への署名がありますたが、今回は何もなし)に6万円もする検査を受けさせられまして、不信感は絶頂に達しております。

ま、それはともかく、前回の続き。

6日間の上映を無事に終えた映画祭でしたが、通常の映画祭の場合、最終日に各賞授賞式があるのに対し、こちらはなんだかえらくのんびりしておりまして、11月25日になってようやく審査部会を開催、受賞作品が決定するという段取りでありました。
気になる審査部会委員の顔ぶれは、下記の通り(教授等の肩書は当時のもの)。

高橋誠一郎(芸術院会員)、辰野隆(東京大学名誉教授)、尾高邦雄(東京大学文学部助教授)、田口泖三郎(科学研究所員)、吉川英治(作家)、石坂洋次郎(作家)、今日出海(作家)、木村荘八(画家)、滝口修造(美術評論家)、大田黒元雄(音楽評論家)、村岡花子(評論家)、青山杉作(演出家)、東山千栄子(女優)、飯島正(映画評論家)、津村秀夫(映画評論家)、清水千代太(映画評論家)、足立忠(東京映画記者会代表)

審査に際しては「大衆の投票」も参考にしたものの、この大衆の投票とは実際に映画を観た観衆による投票なのか、それとは全く無関係に読売新聞購読者を対象に投票を募ったのか、定かではありません。
いずれにせよ、審査部会の結果、作品賞は『肉体の悪魔』に決まり、その他の各部門賞も下記のように決定しました。

演出賞(監督賞):クロード・オータン=ララ(Claude Autant-Lara)(『肉体の悪魔』)
脚本賞:チェーザレ・ザヴァッティーニ(Cesare Zavattini)(『ミラノの奇蹟』)
撮影賞:ジャック・ヒルドヤード(Jack Hildyard)他 (『超音ジェット機』)
録音賞:矢野口文雄 (『生きる』)
主演男優賞:ジェラール・フィリップ(Gérard Philipe) (『肉体の悪魔』)
主演女優賞:ミシュリーヌ・プレール(Micheline Presle) (『肉体の悪魔』)
特別賞:山田五十鈴 (『現代人』)
音楽賞、美術商:該当作品なし

授賞式は審査部会からさらに1ヶ月以上が経過した12月27日、読売新聞社特別会議室で行われ、川喜多長政が作品賞を代理受賞、夫人のかしこも演出賞や撮影賞、主演男女優賞を代理受賞しました…って、これじゃあまるで、東和のための映画祭みたいじゃん。
まあ何しろ、4部門(作品、演出、主演男優、主演女優)受賞作品と撮影賞受賞作品の2本を配給しているから無理もないと言えば無理もないのですが、映画祭の最高委員に名を連ねている人物の関わった映画が賞を独占というのもどうなのかしらんと思いますです。

で。

前回の記事で、限られた9カ国の参加しかないくせになぜ世界映画祭なの?と書きましたが、その限られた参加国の中でも特にアメリカは、セルズニックの旧作(戦争があったから致し方ないのだけれど)とリパブリックの作品のみという、かなりお寒い出品状況で、1952年12月8日付『読売新聞』夕刊に掲載されたコラム「映画祭とセクト主義」ではその裏事情が明かされています。


…聞くところによると、最初の参加作品としてアメリカから『セールスマンの死(Death of a Salesman)』『探偵物語(Detective Story)』『静かな人(静かなる男。The Quiet Man)』フランスから『肉体の冠(Casque d'Or)』『花咲ける騎士道(Fanfan la tulipe)』など、今年のカンヌやヴェニスで気を吐いた新作が予定されていたということだ。それがアメリカ映画は、旧セントラル系のメージャー八社の不参加意思表明、フランス映画は大蔵省の輸入本数制限のワクにひっかかって、ついに会期に間に合わなかったという。(公開時タイトル及び原題はせんきちが付した)


コラムの執筆者(山井富茂)は、このようなアメリカ側の対応を「排他的、セクト的」と批判し、「来年の第二回には、こんなことがないようにしたいものである」と結んでいますが、結局、2回目の映画祭が開催されることはなかったようで、せっかく実現した国際映画祭もたった1度の開催で終わってしまったのでありました。

(おしまい)

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