長らくのご無沙汰でした。
だいぶ調子もよくなったので、ぼちぼち再開します。
まずは最近観たDVD&VCDの在庫整理から。
『裏門(後門)』
1959年、香港(邵氏)。李翰祥監督。胡蝶、王引、王愛明主演。
1960年、東京で開催された第7回アジア映画祭で作品賞を受賞した作品。そのおり、『裏門』という邦題が付いていたので、ここでもそれを採用いたしました。
胡蝶と王引の子供のいない夫婦が王愛明を養子に引き取って、つかの間、生活に潤いがもたらされますが、その後現われた実の母(李香君)のもとに彼女は戻り、また平凡な毎日が戻ってくる・・・・というお話ですが、なんとか子供を取られたくない王引夫妻が実の母に道理を説いて諦めさせようとする件などには、痛ましさすら感じましたです。
何年も一緒に生活したのならともかく、ほんの数カ月共に寝起きしただけの王引夫妻&養女と、憎くて別れたわけではない実の母子とでは、どう考えても後者に分があります。
胡蝶、王引の大ベテラン2人を相手に物怖じしない王愛明(後の七公主の1人ね)の名子役ぶりが見もの。
李監督ならではの豪華なゲスト(後年のUFO作品に通じるものが)の一員として浮気な奥さん役で樂蒂が出ていましたが、これ、コアな樂迷にはあんまり評判がよくないものの(長城時代を引きずったような役どころです)、せんきち的には
激萌え
でおました。
なお、映像は修復できたものの音声は修復不可能だったらしく、台詞、ナレーション、音楽、全て新たに録音しなおしたものでした。
戦前の作品ならともかく、1950年代の作品ですらこの状態って、いったいどういう保存の仕方をしてたのだか。
『寂寞的十七歳 (Lonely Seventeen)』
1967年、台湾(中影)。白景瑞監督。唐寶雲、柯俊雄、李湘主演。
第14回アジア映画祭主演男優賞、第6回金馬奨監督賞、撮影賞、美術デザイン賞、編集賞、録音賞、等を受賞した台湾映画史における「経典」の一つ、なんですけど、他に白景瑞監督の経典と言われる作品(『家在台北』『新娘與我』)と同様、これもかなーり不思議な映画でした、というか、当時の金馬奨の選考基準ってどこにあるのよ、え?
イケメンの従兄(柯俊雄。内妻を捨ててヒロインの姉と逆玉の輿結婚を目論む悪い男)に思いを寄せるヒロイン(唐寶雲。かなり無理のある17歳)が、自動車事故死した従兄の死の原因が自分にあると思い込み、やがては精神に異常をきたしていく・・・・という壊れゆく少女ものなんですが、にっちもさっちもいかなくなったヒロインが精神病院に入院してからの展開がすご過ぎ。
葛香亭演じる精神科の先生ったら、カウンセリングもせずにいきなりヒロインに電気ショックを施し、しまいにはやはり自分を責めた末にノイローゼになって入院してきた柯俊雄の内妻(李湘)と一緒に密室に閉じ込めて「ガチンコ対決」をさせるという荒療治ぶり。
結局、「誰のせいでもなかったのね」ということに落ち着いて2人は立ち直るんですけど、内妻の存在を知らなかったヒロインが、
「何よ!この女狐!あんたが彼を殺したのね!」
と怒り出し、内妻は内妻で
「ふん!小娘が大人のことに口出しするんじゃないわよ!」
と言い返して取っ組み合いの大乱闘になっていた可能性も無きにしも非ずで、かなりデンジャラスな治療法(っていうか、治療してるのか、これで?)だと言えましょう。
この他、ヒロインのことを「小天使」と慕うキチ○イ爺さんがまき起こす騒動も、なんだか・・・・。
この当時の中影の映画って、政治的なメッセージとは無縁のような映画にもその手の記号がひょっこり顔を出すのが特徴みたいなんですが、この作品でも「愛を以って青少年を正しく導きましょう」と大人に説教垂れるついでに、病が癒えたヒロインが
中國青年反共救國團
の冬合宿に参加して元気にスキーをするというオチが青少年の立ち直りの象徴として用いられていました。
総統様、万歳!
ところで、白景瑞監督は言うまでもなく、李翰祥監督、胡金銓監督、李行監督と並ぶ台湾の「四大導演」の1人ですが、他の3人と比べるとだいぶ肌合いが違う、というか、観るたびに過剰過ぎるエネルギー(&懲りすぎの映像)を感じます。
ただ、少なくとも『再見阿郎』に関してはその過剰さがうまく中和されて、味わい深い佳作になっておりました(黄秋生もこの映画好きらしいよ)。
日本で白監督の作品を紹介する機会があったら、ぜひ『再見阿郎』をやってほしいもんです。
『飛躍、海へ(飛躍情海)』
2003年、台湾(果昱)。王毓雅監督。林依晨、周群達、王毓雅主演。
第18回福岡アジア映画祭2004でグランプリを受賞した作品。
陳國富監督の『我的美麗與哀愁』は『牡丹亭』が下敷きになっていましたが、こちらは『梁山伯與祝英台』が下敷き。
前半の静かな展開とは対照的な終盤の過激なストーリー展開には、やや唐突感が否めず。
ま、たしかに、静かな中にも何かが起りそうな気配はあったんですけどね、前半から。
思ったよりも周群達がよかったです。
この映画の林依晨は、初期の頃の呉倩蓮にちょっと似てます。
しかし、あれだけ邵氏版『梁祝』を引用しておきながら(林依晨が歌う歌う)、何のクレジットもないというのはどうなんでしょ?
ちなみに、物語の舞台は台北近郊の漁港でしたが、劇中に登場する映画館は台北市通化街の湳山戯院でした。
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