2006年6月26日月曜日

秋決 (Execution in Autumn)

〔えいが〕


1971年、台湾(大衆)。李行監督。歐威、唐寶雲、葛香亭、傅碧輝主演。

第10回金馬奨作品賞、監督賞、主演男優賞、助演女優賞、脚本賞、撮影賞受賞作品
李行監督本人が自らの代表作と認めている通り、監督の作品の中で最も評価の高い作品です。
香港の「最佳華語片一百部」では、83位にランクインしています。

早くに両親を亡くし、祖母(傅碧輝)に溺愛されて育った裴剛(歐威)は、長じて手の付けられない乱暴者となり、裴剛の子供を生んだと迫る春桃(李湘)と、春桃と共に裴剛を脅した男2人の計3人を殺害、死刑を宣告されます。
祖母はなんとか死刑を回避させようと裏で工作しますが、それも徒労に終わります。
裴家の血筋が絶えることを恐れた祖母は、牢頭(葛香亭)を説得、自分の養女で裴剛の幼なじみである蓮兒(唐寶雲)を獄中の裴剛に嫁がせるのでした。
獄中でも改心することのない裴剛でしたが、蓮兒の献身により、その心に少しずつ変化が現われ始めます・・・・。

タイトルの「秋決」とは、いにしえ、中国において死刑は通常秋に執行されていた、そのことからきた言葉だそうです。
映画は、裴剛が死刑を宣告されてから翌年の秋、死刑が執行されるまでの晩秋、冬、春、夏、そして秋の1年弱の物語です。

自らの犯した罪を省みることなく、自分を甘やかして育てた祖母を恨み、死を恐れ、脱走することばかり考えていた裴剛は、蓮兒と夫婦の契りを交わし、彼女との触れ合いの中で徐々に人間性を取り戻し、彼女の妊娠によって生命の連環を悟り、ついには自分の死を受け入れるようになります。
そこで重要な役割を果たすのはもちろん蓮兒の犠牲を省みない愛、つまりは母性愛でしょうが、しかし見逃してならないのはそんな2人を見守りながら、裴剛を正しい道に導こうとしていく牢頭の存在です。
裴剛と同じ年頃の息子を亡くし、裴剛に亡き息子の面影をだぶらせる牢頭の父性愛も、父親のいない裴剛にとって不可欠のものであったに違いありません。
また、何度裴剛に面罵されながらも辛抱強く生と死の道理を説き続けた牢獄仲間の書生(武家麒)の友情も、やはり得がたいものといえましょう。

牢頭を演じる葛香亭が、厳しい中にも深い慈愛を湛えた演技で、やっぱりいい役者さんだなあと再認識いたしました。
台湾映画の中のお父さんというと、少し前に亡くなった郎雄あたりが有名ですが、郎雄が娘の下着も洗うし若い女性と再婚もする、一見頑固だけど結構さばけたお父さんだったのに対し、葛香亭はもうちょっと伝統的なお父さんのイメージです。

ところで、以前にも少し書いたことがありますけど、この映画の音楽を担当しているのが斎藤一郎。


耳慣れた旋律ゆえ、音楽だけ聴いているとなんだか日本映画のような・・・・。

ちなみに、『第二十四屆香港電影金像獎頒獎典禮特刊』では、齊一郎になってます。
お持ちの方、ご訂正下さい。

いつも不幸な李湘。
『寂寞的十七歳』や『再見阿郎』では柯俊雄に貢いだ挙句に捨てられ、
ここでは「あんたの子よ~」と歐威に迫ってお手打ちに・・・・。


付記:こんな舞台もあったみたいっす。

0 件のコメント: