2011年7月8日金曜日

原びじつかんへ行ってきました

〔ちょっとお耳に〕〔しようもない日常〕

『ライフ・オブ・イミテーション(Life of Imitation)』の元になった映画
『悲しみは空の彼方に(Imitation of Life)』の同一場面。

どうも。
トド@お腹壊しますたです。

さて、先だっての水曜日(6日)、原美術館で開催されている展覧会「ミン ウォン:ライフ オブ イミテーション」を観に行ってきますた。
既に紀平重成さんの「銀幕閑話」やcinetamaさんの「アジア映画巡礼」に詳しいルポがあるので、ミン・ウォンの作品に関する情報はそちらをご参照いただくとして、ここでは美術館の入口を入ってすぐのギャラリー1に展示されているウォン・ハンミン氏所蔵の映画資料について気付いたことをてきとーにメモしておきます。

・昭南島時代の日本映画チラシ
いわゆる昭南島時代に現地で上映された日本映画のチラシが数点ありました。
英文タイトルのみのものが大半でしたが、下記に作品名を記しておきます。

『マレー戦記(マレー戦記~進撃の記録~)』(1940年、日本映画社)
『将軍と参謀と兵』(1942年、日活)→これは絵葉書でした。
『On to Singapore(シンガポール総攻撃)』(1943年、大映)
『Flowers at the Front(戦ひの街)』(1943年、松竹)

『シンガポール総攻撃』の島耕二監督は、その26年後の1969年、邵氏でマレー半島ロケ映画『椰林春戀』のメガホンを取ることになるのでした。

・戦後の日本映画チラシ
戦後、シンガポールで公開された日本映画のチラシ。

『蒙古軍東征(日蓮と蒙古大襲来)』(1958年、大映。光藝配給)
『風虎雲龍傳(柳生武芸帳 双龍秘剣)』(1958年、東宝。光藝配給)
『海底覇龍(大怪獣バラン)』(1958年、東宝。邵氏配給)
『大俠黑旋風(銀座旋風児 黒幕は誰だ)』(1959年、日活。邵氏配給)

『風虎雲龍傳(柳生武芸帳 双龍秘剣)』の岡田茉莉子の名前が、なぜか

小崗茉莉

になっていました。
あんた誰?

『海底覇龍(大怪獣バラン)』の「覇龍」は、おそらく「バラン」の音を当てたもの(ばーろん)でしょう。


東宝 大怪獣バラン 予告編 投稿者 dr0scout1


1950~60年代にかけて、邵氏は日活作品の東南アジアでの配給を一手に引き受けており、日活にとっては重要なビジネスパートナーでした。
1962年に出版された『日活五十年史』にもそのことが記されています。

・南洋もの香港映画ロビーカード

『馬來亞之戀』(1959年)→1954年の同名作品ではなく1959年の廈門語映画(榮華制作)。
『馬來娘惹』(1959年)→これも廈門語映画。
『前程似錦』(1966年)

廈門語映画がシンガポールで一定の市場を確保していたことが、これらのロビーカードからわかります(台湾で活躍した京劇女優・戴綺霞もシンガポール出身で廈門語が堪能なことから、1956年の台湾語映画『黃帝子孫』に出演しました)。
國泰(電懋)、邵氏、光藝、榮華と、シンガポールの華人が香港映画界に残した功績の大きさに改めて敬意を表したくなりました。

・シンガポールで公開された香港映画のポスター

『孽海痴魂』(1949年)
『白白蟒佔龍宮』(1950年)
『風雨牛車水』(1956年)
『娘惹與峇峇』(1956年)
『馬來娘惹』(1959年)
『馬來亞狂戀』(1960年)→張萊萊と藍娣姉妹の作品。シンガポールの北京語映画に分類したほうがいいの…でせうか?

『娘惹與峇峇』は1956年に香港で開催された第3回東南アジア映画祭出品作ですが、そのおり永田ラッパ雅一が「香港の映画は遅れている」といった趣旨の発言を行ったため『娘惹與峇峇』の監督(出演も)である嚴俊が激怒、出品取り下げ騒動に発展したそうです(結局は取り下げを取り下げたみたいですが)。

・その他、気になる紙もの、お写真

1959年、クアラルンプールで開催されたアジア映画祭の折のお写真→陸運濤、何亞禄と共に写るWahid Satay、Maria Menado、Rose Yatimah。
Rose Yatimahは、以前拙ブログでも取り上げたことがありますが、橋幸夫主演の映画『シンガポールの夜は更けて』にも出演していた女優さん。
1963年に東京で開催されたアジア映画祭の折には来日、朝日新聞の取材を受けています(「アジア映画の女優さん3 南国の花の香気 ローズ・ヤティマさん ただいま歌を勉強中」1963年4月22日付『朝日新聞』夕刊。注)。
それによると、彼女は日本のホテルの部屋にあるスリッパがすっかり気に入って、母親へのお土産にスリッパを10足購入したとのことです。
1959年のアジア映画祭関連では、映画祭に参加する邵氏のスターたちの写真を集めたポスターというのもありました。

キャセイ・クリス(Cathay Keris Films) 制作の北京語映画『獅子城(Lion City)』のスチールその他→1960年に制作されたシンガポール製北京語映画『獅子城』のスチールや特刊等の資料。展示会図録(4200円だけど購入するだけの価値は十分あります。展示にはなかった『空の下遠い夢』シンガポール上映時のチラシも掲載)所収の論文に映画に関する詳しい説明がございます。

今はなき映画館の写真の内、金城戲院(Golden City Theatre)で上映されている映画が『二郎神○○』という作品で、すっかり老眼が進んでしまった不肖せんきち(乱視と近視と老眼の三重苦)、最後の2文字がどうしても判読できなかったのですが、もしも『二郎神楊戩』ならば湯浅浪男(湯慕華)監督作品がシンガポールでも上映されていた!ということになり、せんきち的には大発見なのですけれど…。
いずれ拡大鏡持参で再訪したいと思います。

ギャラリー1と入口では3本の短編ドキュメンタリー(シャーマン・オン監督)も上映されていましたが、入口入ってすぐのモニターで流れていた『チケット販売員』は、邵氏系の映画館「東方(Oriental)」(閉館しちゃったみたいです)で切符売りをしていた姉ちゃん(それなりに可愛い)へのインタビューで、せんきちもこの映画館では『ロンゲスト・ナイト(暗花)』を観たことがあるだけに、感慨深いものがありました。

ちなみに、これらの展示からちょっと離れた、殆ど目立たない場所(2階の踊り場附近?)にさりげなくフレッド・マクマレー(Fred MacMurray)とエヴァ・ガードナー(Ava Gardner)の『シンガポール(Singapore)』(1947年、日本未公開)のポスターが貼ってありました。
お見逃しなきよう。

(オチがないけどこのへんで退散)

注:ご参考までにその他の回で取り上げられている女優さんを記すと、第1回:華欣(王莫愁・台湾)、第2回:李嬪華(이빈화・韓国)、第4回:ファリダ・アリヤニ(Farida Arriany・インドネシア)、第5回:丁寧(香港)。

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