2006年3月1日水曜日

春光無限好 (What a Good Time)

〔えいが〕

1968年、香港(九龍)。呉丹監督。陳寶珠、呂奇、王天麗、譚炳文主演。

陳寶珠主演の日本ロケ映画。
大まかなストーリーは、下記の通り。

世界的なカメラマンである陳碧天(呂奇)は、砂浜で写真の撮影をしていましたが、無遠慮な若者グループの乱入によって、せっかくの雰囲気を台無しにされてしまいます。
碧天はグループの女性に抗議しますが、逆に彼女から言い返されてしまい、口論となります。

その後。

碧天の親友・周俊文(譚炳文)は、ガールフレンドのいない碧天に、自分の婚約者である杜曼玲(王天麗)の妹・詠琴(陳寶珠)を紹介しますが、詠琴こそ、あのとき砂浜で碧天と喧嘩をした相手でした。
お互い最悪の印象しかない2人のこと、「日本のお嬢さんが最高さ」と言う碧天に対して詠琴も逆襲、その場は物別れに終わります。
なんとかして2人を和解させたい俊文と曼玲は、詠琴を連れて碧天の家を訪ねますが、ここでも碧天と詠琴は大喧嘩してしまうのでした。
しかし、碧天はそんな詠琴に徐々に惹かれ始めていました。

碧天は自宅にやってきた際に撮影した詠琴の写真を密かにコンテストに出品、その写真が入賞します。
何も聞かされていない詠琴は新聞でそのことを知って大激怒、入賞祝賀パーティーに強引に出席して碧天にビンタを食らわします。
失意の碧天は、1人日本へ旅立つのでした。

今になってようやく自分の思いに気づいた詠琴は、碧天に謝りたいと思いますが、すでに碧天は日本へ旅立った後。
しかし、悶々とする毎日を送る詠琴にチャンスが訪れます。
俊文が日本出張のついでに曼玲を連れて婚前旅行をする、というのです。
詠琴は姉にせがんで自分の同行を許してもらい、3人は日本へ向かうのでした。

日本へ着いて、詠琴は姉と一緒に観光を楽しみますが、2人きりの旅行だとばかり思っていた俊文は不満がたまり、ついに曼玲と口論になってしまいます。
2人の口論を聞いた詠琴は、こっそりホテルを後にします。
詠琴がいなくなったことを知った俊文と曼玲は慌てて詠琴を探しますが、結局見つけることが出来ません。

一夜明けて。

とあるお邸の庭に彷徨いついた詠琴は、そこで碧天の姿を見出します。
そこは、碧天の日本での住居でした。
碧天は、自分の写真のイメージに合う日本女性(なぜか芸者さんなんですけど)を見つけることが出来ずに苦悩していました。
それを知った詠琴は、碧天にモデルの女性を紹介していた華僑の男性に声をかけます。
詠琴の姿を見て閃いたその男性は、さっそく詠琴を芸者にするため彼女を置屋にあずけるのでした。

短期間でめきめき頭角を現した詠琴は、芸者・秋子として売れっ子となり、やがて碧天に見初められて彼の写真のモデルをつとめるようになりました。
そんなとき、俊文と会った碧天は、詠琴が日本で失踪したことを知ります。
碧天の許を訪れた俊文は、秋子が詠琴であることなど知らず、日本の芸者さんの踊りが観られると知って大喜び、詠琴は2人の前で心を込めて踊りを踊ります。

と、そこへやって来たのが曼玲。
俊文の行動に不審を抱いた曼玲は、彼が浮気をしているのではないかと疑い、後をつけていたのでした。
芸者さんの踊りを見てご満悦の俊文を見て彼が不貞を働いていると勘違いした曼玲は香港へ帰ると宣言、自分の行動があらぬ誤解を生んでしまったと責任を感じた詠琴も碧天の前から姿を消します。

日本に残された男2人、ようやく秋子が詠琴だったことに気づき、慌てて香港へ帰るのでした・・・・。

日本ロケ、ということで京都、奈良、東京、あちこちで撮影していますが、映画の中では全て東京として処理されていました。
よって、碧天の日本における住居として登場するのが旧古河庭園(東京都北区)なのに、詠琴が芸者修業をするのは京都・祇園という、距離感がむちゃくちゃな構成となっております。
舞妓のかっこうをして「祇園小唄」を舞う(祇園は舞なんだよなあ、踊りじゃなくて)陳寶珠は、生田悦子に似ていました。

「日本のお嬢さん(←日本語で言ってました)が最高」と言いながら、最後は「香港のお嬢さんが最高」になってしまうオチや、香港のキャピキャピギャルがあっという間に新橋の売れっ子芸者になってしまう(ありえねー!)あたり、日本をダシにしながらさりげなく「中華の優越性」を示唆している映画のような気もいたしました。

で。
面白かったのが、ガールフレンドを紹介すると譚炳文に言われた時の呂奇の台詞。

ガールフレンド?さしづめ、サンドラ・ディーか団令子ってところかな?

呂奇の言う「日本のお嬢さん」って団令子だったのか。
っていうか、団令子って、香港でもかなりメジャーだったのね。
合作映画にも出てたしな(注:英文字幕では「サンドラ・ディーかアン・マーグレット」になっていました)。

ま、これに対して譚炳文は、

君はその2人しか知らないみたいだけど、香港の陳寶珠もいいよ。

と、思いっきり楽屋落ちな台詞で切り返すんですけど。

芸者姿の陳寶珠、「祇園小唄」の後はがらりと趣を変えて「ちゃっきり節」も披露していました。
新橋の芸者さんのレパートリーに「ちゃっきり節」があるか否かは存じませんが、町田佳聲先生がこれを知ったらさぞかし驚かれたことと思います。

「歌はちゃっきり節、映画は陳寶珠」ということで、お後がよろしいようで。

付記1:日本へ来る前、ことごとく碧天と衝突し、碧天の撮った自分の写真を破り捨てるわ、写真機材をぶっ壊すわ、碧天にビンタを食らわすわ、このあたりの詠琴のエキセントリックな行動、いわゆる「脾氣」というやつなのでしょうが、いっぺん医者に診てもらった方がいいのじゃないかと余計な心配をしてしまいましたわ。
そういや、『恋人(戀人)』の李康宜もすごかったなあ・・・・。

付記2:日本ロケのさいに関わった日本人スタッフに関しては、この映画と同時に撮影された『紅葉戀』の感想で取り上げます。

(於:香港電影資料館)

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