〔えいが〕
1969年、台湾(中影)。廖祥雄監督。翁倩玉、武家麒、傅碧輝、魏蘇主演。
ジュディさん(翁倩玉)の台湾映画デビュー作(なぜかYesAsiaではVCDしか扱っていません)。
1970年の台北市における北京語映画興行収入第2位を記録しました(製作年は1969年)。
役人・王太常(魏蘇)のバカ息子・元豊(武家麒)の許へ自ら進んで嫁入りした娘・小翠(翁倩玉)が、次々と奇跡を巻き起こしていくという、『聊斎志異』の「小翠」に材を取った中央電影版黄梅調映画です。
しかし、こちらをお読みいただけばわかる通り、本来は太常が若き日に助けた狐の子だったはずの小翠をなまじ人間の子にしちまったばっかりに、小翠が繰り出す不思議な力(魔法含む)に対する説得力が著しく後退、ゆえに観終わってまさに、
狐につままれたような気分
になりました。
どっちみち狐なのね。
また、『聊斎志異』が原作と言っても映画自体は「明るい歌入り軽喜劇(コテコテギャグ満載)」といった趣なので、『真説チャイニーズ・ゴースト・ストーリー(倩女幽魂)』のような幻想的な雰囲気は皆無です。
さらに、黄梅調映画には欠かせない歌も、邵氏や電懋(國泰)のそれが国語時代曲歌手によるものであるのに対し、こちらではほんまもんの京劇役者が担当しているようで、ちょっと違和感がありました。
邵氏のようなゴージャス感も希薄でしたし。
やはり、何も考えずに楽しく観られるという点が、当時の観客には受けたのでしょう。
何しろ、同じ年の(台北市の北京語映画興収)1位がやはり黄梅調映画である『三笑』(邵氏)ですから、この種の映画がいかに人気があったかがよくわかります。
劇中、ジュディさんの男装もありますが、「鬚ぼうぼうの色気無し」なので、『黒い賭博師 悪魔の左手』の少年ギャンブラーの方が魅力的かも。
それにしても、狐の話が「迷信」だなんて、官製映画会社である中央電影公司の表現の幅がどれほど狭かったかがしのばれるエピソードです。
何だかんだいっても「映画=プロパガンダの道具」だった時代なのですね、まだまだ。
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