2010年7月26日月曜日

渋谷に林翠降臨 続

〔ちょっとお耳に〕〔えいが〕

林翠のベリーダンス。
『游龍戲鳳』(1968年、國泰)より。

どうも。
トド@毎日疲労困憊です。

さて、前回の続き。
神火101 殺しの用心棒(神火一〇一)』撮影のため日本を訪れた林翠への取材記事をちょこっと。

記事が掲載されたのは1966年11月12日付(11日発行)『内外タイムス』。
タイトルは「すべてに素晴らしい 香港スター林翠の日本礼賛」。

この記事によれば、林翠が日本でのスタジオ撮影のため来日したのが1966年11月8日。
9日から3日間の予定で、大船の松竹撮影所で撮影に入ったそうです。

まず記事の冒頭では林翠のプロフィールが紹介されていますが、「学生の恋人(學生情人)」のニックネームや主演作『四千金』がアジア映画祭(現・アジア太平洋映画祭)で作品賞を獲ったこともきちんと取り上げられています。
日本の女優で例えるなら、

岡田茉莉子クラス

だとも。

記事の話題は、林翠の


「日本のアクション映画はとてもすばらしい。共演の吉村実子さんの自然な演技、竹脇無我さんの機敏な動きには感心しました」


という共演者への"社交辞令"から、香港映画の現状及び香港における日本映画の状況に移ります。
この中で、林翠は小林正樹監督の『切腹』(林翠は「ハラキリ」とコメント)を絶賛し、香港での時代劇の人気について語っています。
また、加山雄三版『姿三四郎』が人気を呼んでいること、三船敏郎の評価が高いこと等も書かれていますが、興味深いのは「アート・シアター的な映画鑑賞クラブ」として第一映室の活動が紹介されていること。
記事では「小津安二郎監督の『東京物語』などが上映されているようだ」とありますが、たしかにこの年、第一映室では『東京物語』を上映しており(注1)、『内外タイムス』もけっこうちゃんと取材してるのねえと感心した次第。
ちなみに、この年第一映室が上映した日本映画には、他に『白痴』(黒澤明監督)、『ビルマの竪琴』(市川崑監督)、『鍵』(市川崑監督)があります(注2)。

記事の最後は、


彼女の来日は三度目だが、いままでは観光旅行をするだけのひまがなかったので「今度は日本の美しい景色を見物して帰りたい」


という林翠のコメントを引いて結びますが、じっさいにどこか見物することができたのか、それは定かではありません。

以上、ざざっと記事の内容をご紹介してまいりました。

『神火101 殺しの用心棒』では、林翠は香港製ボンドガールとしてセクスィーな演技を見せていますが、残念ながら中華圏においてはそのタイトルのみが知られているだけで、具体的な内容は既に忘れ去られているようです。
中華圏の映画ファンの中には、ベリーダンスを踊る林翠(冒頭で掲げた映像)に関して「あの"学生の恋人"が!」と違和感を表明しておられる方もいらっしゃいますので(ようつべコメント欄参照)、この映画の「竹脇無我を誘惑して浅水湾に誘いこんだ上で熱烈キス(若干ぎこちないけど)」なんて場面には卒倒する方も出そうです。
しかし、この映画の林翠はとても綺麗に撮れていますし、映画の内容はともかく(石井輝男香港3部作の中では一番出来がよくないと思います)林翠を見るだけの価値は十分にあるはずです。
何より、わたくし的には「菅原文太をアゴで使う林翠」というのがツボです。

というわけで、香港映画ファンの皆様もぜひ、往年の名女優・林翠の美しい姿を拝みに渋谷へ足を運んでみて下さい。

(注1)(注2)共に李浩昌氏「日本藝術電影在香港 1962-2002年」(『日本文化在香港』、2006年、香港大学出版社)による。

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