〔テレビ〕
1975年11月13日、NET・東映。永野靖忠監督。天知茂、吉行和子、山村聡主演。
『非情のライセンス』第109話(第2シーズン第57話)。
日本で亡命生活を送りながら祖国の独立運動を続けていたジョ・コウメイ氏(漢字表記不詳)が、滞在先のホテルから拉致されるという事件が発生、その後、拉致現場を目撃したホテルのボーイも警察での取調べ後に何者かによって射殺されてしまいます。
しかし、日本政府がジョ氏の祖国を統治する政府との間で政治的な決着を図ったため、事件の真相はうやむやのまま一件落着となり、警察の捜査本部はもう1人の目撃者である女性(吉行和子)の保護を取りやめるのでした。
これに不満を抱いた矢部警視(山村聡)は、会田刑事(天知茂)に女性の身辺警護を指示、捜査上の必要から本名を名乗ることが出来ず、仮に「鈴木よし子」と名付けられたその女性は、会田刑事のマンションで潜伏生活を送ることになりました。
目に見えぬ敵から狙われる生活の中で2人は恋に落ちますが、そんなある日、会田刑事の部屋のライフラインが全て断たれてしまい、止む無く2人は車で逃亡を企てます。
が、女性の命を狙う魔の手は、すぐそこまで迫っていたのでした・・・・。
ストーリーを読んでおわかりの通り、1973年に発生した金大中拉致事件をモデルにしたエピソードです。
このドラマが製作された1975年の7月24日には、日本政府と韓国政府との間で第2次政治決着が図られており、よくもまあこんな時期にこんなドラマを作ったもんだと思いましたですわ。
ただ、拉致されるジョ・コウメイ氏が「長く日本で亡命生活を送り、祖国独立運動を行っていた」という、金大中というよりはむしろ台湾の王育徳を連想させる設定となっている点に、放映後のクレーム(圧力?)対策を見る思いがいたしました。
あえてオチをばらしちゃうと(いつもばらしてるけど)、吉行和子演じる目撃者・鈴木よし子(仮名)は実はダミーで、本当の目撃者は捜査本部によって保護されており、鈴木嬢(仮名)は捜査に協力するため危険な囮役を進んで引き受けた独立運動の女闘士だったのでした。
ラスト、射殺された鈴木嬢(仮名)の亡骸を前に、「彼女の本当の名は?」と尋ねる会田刑事に向かって、矢部警視は「それは言わないでほしいと。彼女との約束だ」と告げて去っていきます。
国家権力に対しては全くの無力だった警察という組織が、ここでは事件解決のために名もない個人を平気で利用する、そんな矛盾を苦い思いで噛み締めながら会田刑事は1人佇むのでありました(『昭和ブルース』流れる)。
ちなみに原作では、鈴木嬢(仮名)は男性(鈴木君)だったそうですけれど、美女の方がテレビ的にはやっぱり花があるのかしらん。
仮名も鈴木よし子って、どこにでもありそうでそこそこきれいな名前でしたし。
途中、会田刑事のマンションにかかってくる謎の脅迫電話の声の主が、刑事コジャックそっくり。
コジャックが会田を脅迫。
ただし、キャストに森山周一郎の名前はありませんでしたが。
しかし、会田刑事って優秀なのか間抜けなのかわからん部分も多いですね。
敵の尾行を撒くため、とある喫茶店に鈴木嬢(仮名)と立ち寄った会田刑事、何を血迷ったかここで潜伏中の食材調達を決意、ウエイトレスを呼んで、
「ここは、ハンバーグもやってるんだね。ということは、肉もあるわけだ。じゃあ、その肉と、ハムと、野菜と、パンと、それから、珈琲とジュースも貰おう。全部だよ、全部。紙袋か何かに包んでくれ」
と告げると、いぶかるウエイトレス(当たり前だよな)に向かって、
「あ、心配しなくていい。私は、こういう者だ」
と言いつつ、内ポケットから警察手帳を取り出して見せるのでした。
言っちゃあなんだが、すっごく心配です。
(於:東映チャンネル)
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