2005年2月4日金曜日

飛女正傳  (Teddy Girls)

〔えいが〕



1969年、香港(榮華)。龍剛監督。蕭芳芳、曾江、夏萍、龍剛、薛家燕、沈殿霞主演。

旅行記を書く前に、香港で観た映画の感想文を書いちゃいます。

蕭芳芳(ジョセフィーヌ・シャオ)主演のズベ公物。
ちなみに、「飛女」というのがズベ公のことです。野郎の場合は「阿飛」。『欲望の翼』の原題は『阿飛正傳』でしたね。
台湾公開時のタイトルは、『問題家庭』(つまんねー)。

超アバウトなストーリーは、以下の通り。

徐玉貞(蕭芳芳)は、父が病気なのをいいことに愛人である黎成(龍剛〔ロン・コン〕)を家に連れ込んでいる母(夏萍〔ハー・ペン〕)に反感を抱いていましたが、父の死後、それは決定的なものになりました。
玉貞は母と黎に反発して非行に走り、友人とゴーゴー喫茶(死語)で踊っているところへ絡んできたチンピラと大乱闘、ビール瓶でチンピラを殴って怪我を負わせ補導されます。
裁判所の係官は反省すれば情状の余地があると玉貞を諭すものの、彼女はそれを拒否して感化院に送られます。
感化院では馬碧珊(薛家燕〔シッ・ガーイン〕)を頭目とする一党が権力を握り、ことあるごとに新入りの玉貞を苛め、果ては集団リンチを加えますが、リンチの犯人をたずねる杜院長(曾江〔ケネス・ツァン〕)に頑として口を割らなかったことで碧珊たちの信頼を得、2人はよき友人となるのでした。
そんなある日、玉貞のもとへ母が事業に失敗して自殺したという知らせが届きます。
玉貞は母を死に追い込んだ黎への復讐を決意、感化院を脱走するため仲間に協力を依頼します。
一方、碧珊も母親のもとへ残してきた自分の子供が亡くなったという知らせを聞いて脱走することを決め、この他2人の脱走志願者と計4人で感化院を脱走します。
街へ出た4人は、それぞれの使命を果たすため、それぞれの土地へ向かいます。
自分を捨てて他の女へ走った男に制裁を加える蘇絲(スージー)、自分の子供が亡くなったことに何の感傷も示さず、ただ身体を求めてくるだけの男・阿添(伊雷)を刺し殺す碧珊。
しかし、病身の母と弟妹の身を案じて脱走した院生(すいません。役名失念しました)は、警察の追手を逃れる途中、誤って崖下に転落、命を落とします。
蘇絲、碧珊と合流した玉貞は、3人で黎を殺すため彼が経営するナイトクラブに向かうものの、杜院長が先回りしていたため、目的を果たせません。
が、自宅へ戻った黎を待ち伏せしていた3人は、ついに彼を捕らえます。
ところが、この後、3人を恐ろしい運命が待ち受けていたのでした・・・・。

前半のどよーんとした展開は、ちょっと大映調ですが、感化院を脱走してからは、一気にバイオレンス全開。
山間部を逃走中、ちょっかいを出してきたゴロツキをしばいて身包みはがし、その金で身なりを整えていざ出陣!という展開は、小気味よいです。
ただ、彼女たちの脱走の動機はあくまで個人的な理由によるもので、「腐った大人に復讐さ!」みたいなどでかい大義名分はありません。
また、感化院の職員たちもおおむね彼女たちに対して好意的で(鬼看守なんかいないところがミソ)、特に院長はなんとかして彼女たちを更正させようと奔走しますが、それでも彼女たちの暴走を止めることはできないのでした。
この「主人公のために奔走する好意的な第3者」という人物造型は、龍剛監督作品によく見られるパターンらしく、この後観た『應召女郎』(1973年)でもコールガールの面倒を見る神父(喬宏〔ロイ・チャオ〕)が登場しています。

それから、「なぜ飛女が生まれるのか?」を追求するマスコミとそれに答える専門家を配して問題提起を行うという設定も、お得意の図式のようです(これは『應召女郎』の方で書きます)。
でも、院生が脱走して殺人や傷害事件を起こしているのに、当の院長を取り囲んだマスコミが彼を責めるどころか「貧困や家庭問題、そこから飛女は生まれる」という(院長の)ありがたーいお説を拝聴しちゃうという展開は、「おいおい」って感じがしましたけど。
フツーなら、「あんたんとこの院生が脱走した上にこんな事件まで起こして、どうやって責任取るんですか!」ってなりそうなもんなんですが。

扱っているテーマはショッキングで、オチもかなりキョーレツでありながら、全体を貫いているのはあくまでもヒューマニズムな映画でありました。

あ、そうそう、蕭芳芳のゴーゴーダンスと、院生たちのシャワーシーン&ファッションショーも楽しめますよ。
「昔美少女・今おばドル」の薛家燕と「今も昔も重量級」の沈殿霞も、がんばっていました。

(於:香港電影資料館)

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