〔えいが〕
2003年、香港。張婉婷監督。
成龍(ジャッキー・チェン)の両親の秘められた過去を描いたドキュメンタリー。
中国語題は、『龍的深處 失落的拼圖』。
いやあ、「なるほどねえ」と圧倒されたんですけど、でも、お父さんの話を聞いていて頭の中が混乱したのも事実。
特に戦前から戦中、戦後にかけての足取りが、今ひとつよく見えませんでした。
例えば、蕪湖(長江沿いに位置する安徽省の都市)で三菱の船に乗っていたとき、裏でこっそり商売をしていて(蕪湖で仕入れた品を南京で売る)それがばれて日本人(憲兵?)に捕まり、拘留中に中国人を処刑するところを見せられたというんですが、それはやっぱり蕪湖が日本軍に占領されて以降の話なのじゃなかろうか、などと思いつつ観ていると、今度は同じ土地で港の検査官をしていたという話が出てきて、いったい三菱の話はいつからいつまでのことで、港の検査官にはいつなったのかということになり、その時点であっしの脳みそはパンクいたしました。
この批評ほどきついことは言いませんが、お父さんの話をもう少し整理してほしかったところです。
「上海に来たのは29のとき」と言っていたので、それ(上海行き)についてはおそらく1943年ないしは44年(お父さんは1915年生まれ)のことだと把握できたけれど。
お母さんの話が聞ければ、もっといろいろな事実が出てきたのかも知れませんが、お父さんがジャッキーにこの話をする気になった直接のきっかけがお母さんの病気だったため、お母さんへのインタビューはありませんでした。
それから、インタビューの合間に挿入される当時の映像に関して「いつ、どこで、誰が撮ったものなのか」の説明がないので、「銀座中央通りを行進する大日本国防婦人会」の映像が1937年以前のくだりで出てくると、こちらとしては映画の内容よりもそちらのデータ(いつ、どこで、誰が)の方がつい気になってしまい・・・・。
日本軍の空襲の映像を複数の場面で使い回ししている点も、やはり・・・・。
実は本作を観ていて、あっしはジャッキーの両親よりもむしろ2人が大陸に残してきた子供たちの半生の方を知りたいと思いました。
映画では文革中のことにしか触れていないけど、それ以前にも相当辛い目に遭っていたはず。
何しろ、「孤児」になっちゃったんですから。
配偶者と子供を大陸に残して香港や台湾、果ては日本に流れ着いた人の話はいろいろありますが、子供だけ残してきたってところがなんとも重い事実です。
で、この秘密を知ったジャッキーですが、今でも2人の異母兄には会っていないし、兄弟としての実感もほとんどない模様。
2人の異父姉に関しては、2番目のお姉さんがお母さん(2002年没)の介護をしている映像が出てきたので、こちらとは交流があるらしいものの、そのお姉さんが控えめに、
私は彼のような弟を持って幸せだけれど、彼の方はそう(←姉がいたことを幸せに)は思っていないかも知れない。
と話していたのが印象的でした。
いつの日か、ジャッキーが異母兄と会うときが来るのか、また、近い将来必ず来るであろうお父さんの死後、ジャッキーと異母兄・異父姉との関係はどう変わっていくのか、そのことも気がかりになりました。
(オチがないけどこのまま終了)
付記:そういや、ジャッキーのお父さん、于占元(ジャッキーの師匠)のことを「国民党のスパイ」と言ってましたわ。当時の芸能人(特に映画人)はたいてい左派(共産党支持)か右派(国民党支持)に分かれて活動していましたから、そのことを大げさに捉えて「スパイ」呼ばわりしたのか、それとも本当に特務機関とつながりのある人物だったのか、そこいらへんは謎のまま、お父さんの「言いっぱなし」に終わっていました。
この映画、見方を変えると「張婉婷(メイベル・チャン)の中国人発見の旅」のようにも思えましたです。
(於:新宿武蔵野館3)
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