2005年6月29日水曜日

玉樓三鳳 (Between Tears and Laughter)

〔えいが〕


1961年、香港(電懋)。唐煌監督。李湄、王萊、丁皓、喬宏、田青主演。

アパートの部屋をシェアして暮らす3人のルームメイト・趙淑嫻(王萊)、彭梅芬(李湄)、徐曼麗(丁皓)が、それぞれの幸せを掴むまでを描いた作品。
都市に暮らす独身女性の生態という、電懋お得意の都会的なセンスあふれる映画です。
30代(王萊)、20代後半(李湄)、20代前半(丁皓)という世代の違う女性たちの恋愛模様を描いているという点から考えると、2004年の張艾嘉監督作品『20:30:40』のルーツのような気もしますが、本作自体のヒントとしては、1954年のアメリカ映画『愛の泉(Three Coins in the Fountain)』あたりが元ネタとしてあるのかも知れません。

おおまかなストーリーは、下記の通り。

趙淑嫻(王萊)は、働きながら小児麻痺の息子・小鴻(鄧小宇)を育てるシングルマザー。
ピアニストの夫・陸飛鴻(楊志卿)は、数年前に愛人と海外へ失踪したのですが、やがてその過ちを心から悔い、許しを請う手紙を淑嫻に送り続けていました。
が、彼女は夫を許すことが出来ません。
香港へ帰ってきた飛鴻は入院中の小鴻と会い、淑嫻とヨリを戻そうとするものの、彼女はそれを拒みます。
しかし、父を慕う小鴻の姿と、飛鴻の真摯な態度に心打たれた淑嫻は、再び親子3人で生きる道を選ぶのでした。
彭梅芬(李湄)は、売れっ子作家。パイロットだった亡き恋人のことが忘れられず、新しい恋に踏み出すことができすにいました。
そんなある日、徐曼麗(丁皓)のペンフレンドでシンガポールからやって来た鄭大江(喬宏)と会った梅芬は、彼の中に恋人の面影を見、大江も梅芬に心魅かれます。
曼麗への後ろめたさと亡き恋人への断ちがたい思いから一度は大江の求愛を拒絶した梅芬でしたが、最後は自分の気持ちに正直に生きることを決意、大江の愛を受け入れるのでした。
徐曼麗は、従兄弟で許婚の李家華(田青)の頼りない態度に物足りなさを感じ、まだ見ぬペンフレンドの鄭大江への憧れを募らせていました。
香港へ来た大江と会った曼麗は、男らしい彼に一目ぼれするものの、大江は彼女のことを妹のようにしか思っていず、梅芬に心が傾いていました。
大江と梅芬が抱き合う姿を偶然見てしまった曼麗は、ショックのあまりその場を立ち去る途中誤って事故に遭い、病院に担ぎ込まれます。
そこへかけつけた家華はつきっきりで曼麗の看病に当たり、家華の深い愛情を知った曼麗は彼と結婚する決意をするのでした。

王萊のエピソードは、一言で言えば「子は鎹」ということなのでしょうが、息子がもう少し大きくなって父親が一度は自分たちを捨てたその理由を知ったとき、もう一波乱ありそうな、そんな予感がいたします。
お話云々よりはむしろ、強面の楊志卿がメロウなピアニスト役というキャスティングの方に面白さを感じましたです。

「こんなんでピアニストやってまーす!」な楊志卿。『大酔侠』の悪い坊さんです。

李湄のエピソード、あっしにはこれが一番共感できたかな。
李湄が、しっとりとした情感のある大人の女性を演じて出色でした。
同じ電懋所属の女優さんでも、林翠や林黛、葉楓、尤敏、葛蘭なんかとは違う、成熟した魅力のある女優さんです。
ちなみにこの年、彼女は菊田一夫に見出されて来日、東宝ミュージカル『香港』で越路吹雪と共演しています。

丁皓のエピソードは、んー、どうなんでしょ。
サド妻とマゾ夫になりそうな予感。
それはそれで釣り合いが取れているから、いいのかしらん。
身近な恋人の深い愛情を再認識というオチはありがちですが、当時としては無難なものだったのでしょう。

ところで、丁皓が勤めているテーラー(伯父さん〔陳又新〕の経営)、位置関係から推定すると国賓酒店(アンバサダーホテル)の辺りなのですが。

田青の愛車(東宝映画みたいなオープン・カー) でご出勤の丁皓。彌敦道(ネーザン・ロード)を挟んで、半島酒店(ペニンシュラ・ホテル)が見えます。

最後にもう一つ。
王萊の勤め先の飲料水。昔も今も、お水は屈臣氏



もういっちょおまけ。
男1人と女2人で山頂(ビクトリア・ピーク)へ。ちょっぴり微妙な関係です。

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