2005年6月27日月曜日

行けるもんなら行ってみな!

〔ちょっとお耳に〕

以前、日記サイト(長期放置中)でも触れたことがあるのですが、今日は『週刊女性』1961年4月第5週号掲載の「あなたも行ける東洋のモナコ 香港旅行も夢ではありません」なる記事をちょこっとご紹介いたします。

本記事は、『政治手帳』編集部に勤めるKさん(女性。実際の記事では実名)が、仕事と観光を兼ねて香港へ旅行した、その折の体験と旅の心得を記した軽いルポです。
羽田から香港へは、英国航空機に乗ってわずか3時間半(これ、早過ぎないか?)で着く「ちょっとした散歩」だなんて、今読んでもかなり大胆なことを書いているなあと思うのですけれど、何よりも目を引くのは記事の最後にまとめられている旅費を含めた「旅の注意事項」。
以下に、引用してみましょう。

一、羽田-香港間航空運賃 10万2945円
  飛行機代        9万9400円
  旅券           1500円
  香港ビザ         1145円
  注射代           900円
二、香港ホテル代
  一流 45ドル~60ドル
  二流 25ドル~35ドル
三、タクシー代(2キロ)
  1ドル50セント(香港島側)
  1ドル    (九龍側)
四、食事
  朝食 3ドル~5ドル
  昼食 5ドル~10ドル
  夜食(原文ママ) 5ドル~10ドル
五、一日の滞在費は、いっさいを含めて最低で、50ドル~70ドル
六、滞在者は日本総領事館へ挨拶に行ったほうがよい(渡航前には外務省や大蔵省で係に会い、渡航目的等の説明をする義務もあり・せんきち注)。
(香港1ドルは日本円の70円)

飛行機代の高さに思わず「お口あんぐり」ですが、これに加えて宿泊費が3000円ほど(一流と二流の間をとって)、滞在費が1日4000円ほどかかりますから、3泊4日の日程で出かけるとして、ざっと見積もっても13万円は必要ということになります。
大卒初任給が約1万3000円の時代に、です。

オー、マーイ、ガーッ!

にもかかわらず、このKさん、

「現在、海外旅行は、ドルその他の関係で、私のように仕事以外の旅(単なる観光旅行)は許されていない。しかし、国際的な諸関係の自由化が着々と進められているので(1964年に自由化・せんきち注)、近い将来、BGの観光旅行、新婚旅行も実現できると思う。
いまから、旅費を積んでおくと、ちょうどいいかもしれない。香港といっても、行ってみれば、ほんとうに簡単なことだ」

と、やっぱり大胆すぎるご提言(?)をなさっていました。
第一、月給手取り1万5000円として、毎月3000円ずつ積み立てて、年2回のボーナス時には1万円追加として計算しても1人分貯めるのに2年以上かかりますし(利息は考えずに)、女性の場合、収入はこれよりも少ないでしょうから、もっと長い歳月がかかることでしょう。
どう見ても、「行けるもんなら行ってみな!」の世界としか思えません。

ちなみに、このときKさんが宿泊したホテルは帝國酒店(インペリアル・ホテル)。
今ではエコノミー・ホテルとして知られているこのホテルですが、当時は1泊45ドルの一流ホテルでした。

「香港旅行も夢ではありません」どころか、現実にはまだまだ「夢のまた夢」の時代だったのでありました。とほほ。

付記:『ホノルル・東京・香港』で、宝田明と尤敏が外務省の建物から出てくる場面がありますが、あれは渡航前の面接を済ませたところだったのですね、はい。 

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